レクサス CT200h "バージョンC" 試乗インプレッション(2011.5)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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■ エクステリア
レクサスが求める美しさのよりどころとはどこにあるのだろう。自動車における日本オリジナルの美意識の追求はまだ続く。元々レクサスはアメリカ向け高級ブランドだった。だからことさら日本的である必要はない。しかしレクサスブランドを日本に、ある意味逆輸入するとしたときに「日本的な高級とは」というテーマで大いに考えたのだろう。その「考えた痕跡」を感じさせすぎて、直感的に良さが伝わってこないところが日本におけるレクサスの難点。
試乗車にはモデリスタブランドのエアロやマフラー、ダウンサスが取り付けられていた。最近この種の「ディーラーオプション」付きの試乗車に当たる。
■ 視界・扱いやすさ
ダッシュボードの上辺を低く抑えようとしている。前方の見晴らしはスッキリしている。エアコン操作パネルは中段でやや角度が立っており、オーディオ類はその下でコンソールと一体。角度はやや寝かされ、最近流行の上から押せる操作性。角度を寝かせると日光を受けて白く光る嫌いがあるが、このクルマの場合、下段、手前に近づくにつれてなだらかに角度が変えられており、日光の影響をあまり受けない。よく考えられている。
■ インテリア・ラゲッジ
バンブー(竹、オプション)のオーナメントパネルがオリエンタルな雰囲気。ほかアッシュバール(茶系)なども選択できる(オプション)。こうした加飾品は目立てばいいというものではなく、さりげなくこだわりを表現できるところがいい。"バージョンC"の内装はファブリック。色はこのアイボリー以外にオーシャンブルー、レッド、ブラック、ブラウンが選択でき、別グレードの本革はブラック、アイボリーの他に、ウォーターホワイトという少しトーンを落とした白があって、これがなかなか上品。ブラックオパールの車体にウォーターホワイト革内装、アッシュバール木目の組み合わせはちょっとイイなと思う。筆者の稼ぎでは手の届かないレクサスだが、こうして様々な色やマテリアルから"自分仕様"を妄想できるのもレクサスのいいところ。
シートは硬めだが面で身体を支えるタイプで、どこかにストレスが集中することもなくうまく圧面を分散していると思う。表皮の性質もあると思うが、硬くても身体に触れる部分は優しい。レクサスにしてパワーシートでないことに個人的にはやや戸惑いはあるが、実際にユーザーからはあまり強く要望されないようだ(パワーシートは最上位グレードに標準)。
後席の広さはほどほど。絶対的な広さより包まれ感や安心感を重視している。ファミリーカーではなくパーソナルカーであることがこのあたりにも表れている。さすがに中央にも3点ベルト、ヘッドレストあり。
ラゲッジスペースには奥行きがあり、このクルマが単なるコンパクトであるだけでなく、ショートワゴンとしての目的も持たされているとわかる。
■ エンジン・トランスミッション
基本的にプリウスと同じシステムと認識していいようだが、初期の現行プリウスに感じた小さなギクシャク感はほぼ解決され、エンジンが目覚めたり動力に加わったり、いろいろとやりくりがあっても走りはスムーズそのもの。力も充分にある。アクセルの初期反応は、モードをスポーツ側に切り替えてもまだ独特の「ため」が残る。
エアロとセットのマフラーはなんと4本出し。しかしエンジンがかかった時に急に爆音になっても困るから、音は抑えてある。ステレオの低音調整レベルを1つ上げたくらいの太さ、低さといえばわかるだろうか。といって、ベース、ノーマル車がどんなものかは知らないのだけれど。
■ 足廻り
ディーラーオプションのローダウンスプリングに18インチタイア、ホイールを組み込まれた足回り。2センチ程度車高は下がり、はっきりと硬い乗り心地だが、ただ硬くしたものとは違い、当たりの優しさはそのままに芯が強くなったという印象がある。ま、ノーマル状態のクルマを試せていないのでなんともいえない部分はあるが、やはりメーカー純正部品だけに完成度は高い。
車体、足回りの個々の剛性、取り付け剛性はしっかりとしているようで、振動やガタつきを感じさせないクォリティの高さがある。このプラットフォームを用いる他車種において認められた振動の処理についての課題はかなり解決したと思う。全体の印象としてBMW1シリーズを思わせたが、1シリーズとの違いはタイアと路面の当たり、ハンドルへの反力の優しさ。BMのダイレクト感は確かに骨太さに繋がるが時として長時間ドライブのあとに疲れが溜まることは否定しない。BMWを所有していたことのある筆者の個人的な感想だ。そして実際にもそうした意見がもたらされたり、あるいはトヨタ・レクサスの方針からも人への印象を優しく設定したのだろう。それはそれで間違いではないと思う。
■ 結論
大きさも適当で、やっと小さな高級車という日本的な分野においてきちんと表現できるようになってきたと思う。調度も落ち着いているし、ハイブリッドであることもまた大きな強みだろう。私はいいクルマだと思う。しかしそれは"トヨタ車"として見ると、という注釈付きだ。レクサスはどうあるべきか、どんな客層に買って欲しいのか、そのへんの考えがまだ定まっていないように見える。簡単に言うとまだ「慣れていない」感じがする。それが収束するには時間がかかるだろう。高級車には「俺はこうだ」という自信が必要だ。高級車を買う人はその自信に対してお金を払う。レクサスにはまだそれがない。それはやはり日本における歴史の浅さと言い換えてもいいのかも知れない。
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■ 5段階評価/★★★★☆
・スタイル(-1)
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■ 試乗データ
試乗日:2011年5月18日
試乗車:レクサスCT200h"バージョンC"(車両本体価格:3,750,000円)
型式:DAA-ZWA10
エンジン:2ZR-FXE+3JM(ハイブリッド)
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4320×1765×1460mm
ホイールベース:2600mm
最小回転半径:5.2m
車両重量:1400kg
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:ホワイトパールクリスタルシャイン(077)
内装色:アイボリー/ファブリック
装着されていたオプション:
<メーカーオプション>
LEDヘッドランプ(ポップアップ式ヘッドランプクリーナー付き)(105,000円)
オーナメントパネル・バンブー(マットフィニッシュ)(31,500円)
<ディーラーオプション>
フロアマット・タイプB(115,500円)
モデリスタエアロキット(318,150円)
〃18インチアルミホイール+タイアセット(360,150円)
〃ローダウンスプリング(94,500円)他
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■ メーカーサイト
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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。
前田恵祐
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