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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#075 トヨタの真骨頂

トヨタ プリウスα S "Lセレクション" 試乗インプレッション


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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 格差社会が広まり、クルマに対するニーズもそれに応じて変化した。以前は中流意識をくすぐるちょっと贅沢な、装飾を施したクルマや付加価値の多いクルマがもてはやされたものだが、今や日本人も合理主義的に余計なものを省き、より中身のつまった製品、あるいは真に使いやすい製品を求めるようになった。プリウスはエコカーのパイオニアだが、居住空間や荷室空間に対する要求が少なくなかったようだ。それにきちん、きちんと対応するのがトヨタというメーカーである。



エクステリア



 一見プリウスのように見えて一回りくらい大きい。ミニバンだがこの試乗車は5人乗り。個人的には、なにも無理やり3列シートにする必要はなくて、5人でゆったりできる空間を得たことの方が大事だと思う。しかし、雨が降っていて同じ方向に行くんだから乗せていってくれよ、というときに親切できることもまた大事。それが日本人。




 プリウスではなくてウィッシュ・ハイブリッドではダメだったんだろうか。プリウスのブランド力というものだろう。



視界・扱いやすさ



 メータパネルは、個人的にはちょっと小さくまとまりすぎという気もするが、そもそも、このメーターで提供しようと言う情報量が多いからそう感じるのかもしれない。即読性はあまり高くない。




 Aピラーの太さが気になると言う声があると聞いたが、個人的にはあまり気にならなかった。三角窓とその後方のピラーの処理も良く、ミラー付近もすっきりしていて視界が削がれている印象は極力なくそうとしている設計だと思う。



インテリア・ラゲッジ

 プリウスのダッシュボードやインテリアのセンスを見ていると、パナソニックかどこかの家電製品のイメージを思い浮かべる。電気を使って走るから、という先入観もあるかもしれない。電化製品的な自動車、という狙い、それが現代におけるニューコンセプトカーというわけか。




 前席はサイズも充分で、現行プリウスの初期モデルのそれとくらべても坐り心地はより自然なものになり、体圧の分散もうまく出来ていると思う。どこか一箇所に疲労が蓄積する印象はない。試乗車には高さ調整がなかった。




 後席の背もたれははっきりとシートアレンジの容易性を意識したサイズとデザイン。坐り心地よりもアレンジ、というあたりが日本人のニーズ。これはニーズが変わればシートも変わる、だろう。広さは充分以上。普通のプリウスより眺めも良く、その意味では快適。




 試乗車は二列シート仕様。ラゲージはこう。ちょっと床は高い。




 ラゲージの床下はこんなに深い。壁の奥にはふつうのプリウスと同じニッケル水素バッテリー。7人乗り(3列シート車)はフロントコンソールの中にリチウムイオンバッテリー。この大きさで10・15モード31.0KM/L、デミオはあの大きさだがガソリンエンジンで30.0KM/L。どちらに価値を見るかは貴方次第。



エンジン・トランスミッション



 プリウスに乗った時にいつも気になったのは、アクセルを踏み込んだときの反応に、独特の「溜め」があること。ま、電気で走るクルマの仲間は他のものも大なり小なりそれはあるし、そういうものだと身体が慣れてしまえばどうということもないのだろうが、もう少し自然になればなぁと思っていた。が、今回乗った印象ではさほど気にはならなかった。レクサスCtはもっとアクセルにダイレクトに反応したと思うが、そこはチューンの違いか。



足廻り

 ひと回り車体が大きくなって、足回りも心なしかしなやかさを身につけたように思う。ロードノイズや振動の伝わりも、「ああ、軽量化のせいなんだな」と思わせるところはなかったし、足のストロークもすこしばかりゆったりとしていて、居住性重視なのだなと感じた。




 ハンドルはダイレクトではないし、まぁその必要もないだろうが、切り始めると初期の段階から思ったよりクイックで、少なくとも街中をスイスイと行くような走りには過不足なく応えてくれる。



結論

 トヨタらしいソツのない、良いクルマそのもの。細かいところで指摘したい点はあるにはあるが、おおむねこれを購入して大きな不満を抱くことなく、何年かを共にすることが出来るはずだ。プリウスは国民車としていまや標準的なところにあり、かつてのマークIIに代わる存在になるのではないだろうか。これに乗っていればなんら不満はなく、社会にコミットした環境意識の高い人、という印象を与え、どこに乗り付けてもイヤな顔をされることはなく、その場その場の風景に溶け込む。






 プリウスは最初、確かに先進的な環境自動車としてデビューはしたが、あくまでも変り種という認識は持たれていた。初期にはそれなりに故障があったと聞く。しかしいまやプリウスは過酷な状況に置かれるタクシーにもたくさん導入され、トヨタといえばプリウス、と言ってもおかしくない知名度にまでなった。今回こうして新たなバリエーションで顧客のニーズに応え、ラインナップの増強も図られた。これからはこのクルマ(ブランド)を中心に回っていくのだろうな、と、運転しながら思うのだった。



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5段階評価/★★★☆☆
・いまひとつ実用本位になりきれていない細部のディテール、メーター等(-1)
・別に僕が褒めなくてもみんなが褒めるだろうから、まぁいいか、という気にさせること(-1)



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試乗データ

試乗日:2011年8月
試乗車:プリウスα S "Lセレクション"(車両本体価格:2,350,000円)
型式:DAA-ZVW41W
エンジン:2ZR-FXE+5JM
トランスミッション:電気式無断変速
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4615×1775×1575mm
ホイールベース:2780mm
最小回転半径:5.5m
車両重量:1450kg
ボディタイプ:5ドアステーションワゴン
ボディ色:シルバーメタリック #1F7
内装色:グレー
装着されていたオプション:
    スマートナビ(NSZT-W61T)(182.700円)



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メーカーサイト
http://toyota.jp/priusalpha/



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐


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