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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#076 トヨタ カムリ ハイブリッド

カムリ・ハイブリッド試乗インプレッション(2011.10)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 エクステリア



 乱暴に言ってしまえばカムリはカローラのLLサイズみたいなところがあった、いや、もちろんその大らかさが良かったわけだが、少々趣向を変えてきた。元々装飾は控えめだったところに、今回はこのように質感の高さが加わり、大人の為の高級サルーンに生まれ変わった。




 カムリらしい堂々としたプロファイルの中に繊細さも。どちらかというとトラディショナルなサルーンスタイルだが、むしろそれでいいのだし、それがいいのだ。セダンとはある種現代の乗用車の基本形だから、敢えてそれを崩す必要はない。主張しすぎない品の良さ。品の良さとは知性。




 ゴテゴテしすぎていない、でも高級。トヨタ車としては、実に異例なことだ。ウインダムは元がカムリであるという素性を隠そう隠そうと、高級感の過剰な「演出」が鼻についたが、今回のカムリはそのあたりに無理をしている痕跡がない。厚化粧ではなく、薄化粧でも美人、なのがいい。



 視界・扱いやすさ



 メーターパネルは、ハイブリッド車として整理整頓が進み、欲しい情報がキチッと確認できる。操作系も「ハイブリッドだから特別なことをやろう」としているところがなく、常識的で自然に扱える。装備類もあまりあれこれと欲張っていないところに、泰然とした大人の精神を感じる。ダッシュボードの加飾も控えめだが、やはり品良く質感は高い。




 ありていだが見やすいメーター。




 すっきりとした造形。




 衝撃の事実! オートライトの操作ロジックが他社と同じに「なってしまった」。「0」の次がいきなり「AUTO」。任意ワンアクションで車幅灯を選択しにくくなった。筆者個人としては不便になったと思うが、そこは各々の習慣にもよるのだろう。



 インテリア・ラゲッジ



 前席のサイズはたっぷりとしていて、最上級グレード「レザーパッケージ」の革はしなやかで優しい坐り心地。充分に上質。ただし黒内装しかないのはちょっと残念。




 後席の広さは言わずもがな。センタートンネルも低い。




 木目に見えてカーボン調に茶色く着色している。悪くない。でも素直に木目でもよかった。




 ゴルフバッグ4つ収納可能。後席背もたれは運転席側のみトランクスルー。



 エンジン・トランスミッション

 2.5リッターエンジンとモーターの組み合わせでまったくストレスのない、しかもスムーズで静かな、言い換えれば高級車の走りとして充分以上。シチュエーションによってエンジン始動時にブルンと振動を意識させるが、それ以外での静けさがそう思わせるだけかもしれない。




 ハイブリッド特有の、アクセルを踏んですぐの「溜め」がなく、ECOモードでもそれはあまり感じない。電気を使うクルマが、なべてそうであるように、優しい追い風に後押しされるようにフワリと沸き上がる力と滑らかな加速感。それはこのクルマの高級感にも、もちろん寄与している。最近では当たり前になりつつある、坂道での後退防止装置も当然備わる。



 足廻り

 乗り心地はしなやかだが、タイアが路面とタッチしている印象を完全には消していない。しかしフラット感や振動の処理ははっきりと前モデルより進化していて、この点でも今回のモデルが高級車の領域を狙っていることがわかる。




 ゆったりとしていて騒がしくない。久しく勢いの無かったミディアムサイズの高級サルーンとして、資質は高い。シトロエンのような短いストロークのうちに効き目を発揮するブレーキのペダルタッチはこのクルマの中で唯一独特な感触だが、慣れれば軽い踏力でブレーキ操作が可能。



 結論

 トヨタがこのクルマで、”控えめな高級”を体現してきたことが、じつは個人的にもっとも新しいことだと思った。高級と強欲は紙一重で、トヨタも日本人も、そのあたりがイマイチ、イマニくらい理解できていなかったが、このクルマの高級感の中には日本人が美徳とする慎ましさや清らかさを含んでいる。妙に回りくどいレクサスのようなものよりずっとストレートに日本人らしい価値観を示しているのではないだろうか。そのクルマが発売後、予想を大きく上回る受注を得たという事実は、もしかしたら今後トヨタの考える「高級観」に一石を投ずるかもしれない。



 もうワンランク静かに、しなやかになれば、これはもう「クラウン」を名乗って不思議はない、というモノにはなっている (と、いうことは現状にして充分以上)。そして、いずれトヨタはこのクルマの売れ行きや評判を踏まえ、開発コストの圧縮や生産設備の合理化を目的にクラウンやマークXをFF化してくるはずだ。新型カムリはその実験のようなものだと私は理解している。上々のスタートに新たな予感が広がっていく。








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 5段階評価/★★★★★
現時点でお薦めしない理由は見当たらず。



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 試乗データ

試乗日:2011年10月12日
試乗車:カムリ・ハイブリッド・レザーパッケージ(車両本体価格:3,800,000円)
型式:DAA-AVV50
エンジン:2AR-FXE+2JM
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4825×1825×1470mm
ホイールベース:2775mm
最小回転半径:5.5m
車両重量:1550kg
ボディタイプ:4ドアサルーン
ボディ色:アティチュードブラックマイカ #218
内装色:ブラック
装着されていたオプション:
 チルト&スライド電動ムーンルーフ(100,500円)



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 メーカーサイト
http://toyota.jp/camry/



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。






前田恵祐


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