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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#087 訪れし春めく風に、ジュリエッタ

アルファロメオ・ジュリエッタ・スプリント ~ 試乗インプレッション(2012.3)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 イタ車に乗るのは「伊達」である。しかしかつてはその伊達の裏側に涙ぐましい故障との戦いや、独特のコツを要する使い勝手との格闘があった。それでも敢えて乗る、乗って格好をつけるから伊達なのである。だがその「伊達」は時と共にカタチを変えた。



エクステリア



 縦長ヘッドライトに伝統のグリルの組み合わせと、ややコッテリとした造形は、ここ数年、一連のアルファデザインのアイデンティティを踏襲している。




 2ドア風に見えるよう、リアドアのノブをウインドウ後端に設置するのもまた歴代共通項。




 テールはキュッとすぼまっていてお尻が小さい。前から見るとワイドだが、後ろから見ると小さく見えるデザイン。



視界・扱いやすさ



 ウエストラインが高く、包まれ感が強い。ダッシュボードも存在感があってちょっとモノモノしい感じがする。操作系はシンプルだがこの存在感を良しとするかどうかは好みが別れそう。




 メーターの加飾は適度で、見やすさも考えられている。




 ダッシュボード上にエアの吹き出し口がある。夏場など、フェイスレベルだけでなく車室全体に冷気が行き渡り空調がより効果的なものになる。




 Aピラーの存在感はやや強い。ドア内張りはシートが布でも合皮。



インテリア・ラゲッジ



 シートサイズに横幅があまりないのはアルファの伝統。座って狭い感じはしないが、ユッタリ感は少ない。それでもどこかにストレスがかかるわけでなし、効果的に身体を支えてくれる。

前席ヘッドルーム:こぶし縦に1つ




 後席は広々とはいえないが、居住性は良い。頭上空間は削られるが座面が前席より一段高く、フロントスクリーン越しの景色をきちんと見渡せる。このあたりはイタ車らしいところ。ドイツ車の後席に座ると前席のヘッドレストがドーンと鎮座して、空間の余裕はあっても視覚的に窮屈感があることが多い。

後席ヘッドルーム:手のひら1枚/膝前:こぶし縦に1つ




 ラゲッジはすぼまったテールから想像するより広い。



エンジン・トランスミッション

 1.4リッターターボエンジンは基本的にMITOと同じもの。数値はともかく、感覚的には1.8リッターNAくらいの余裕はある。トルクはフラットだしTCTのシフトスケジュールが低い回転域を選んでも無難に走る。フリクションが少なく軽く回る感じはかつてのランプレーディなどを知る身には「ずいぶん今風になったな」と思わせる。音も、イタ車にしては静か。昔のように情熱的ではなくどちらかというと実用的な性質。




 TCTは特にパーキングスピードがもう一歩。クラッチが切れている時にブレーキのサーボが効きすぎてちょっと慣れが必要。とはいえ初期のセレスピードを知るなら隔世の感。走り出せばレスポンス良く、充分スムーズ。シフトダウン時のブリッピングなど、マニュアル的に動作する。



足廻り

 はっきりとイタ車、アルファの特徴が現れている。なんとしてでも車体をフラットに、水平に保とうと踏ん張るより、多少姿勢変化があっても自然でしなやかな動きで受け流す寛容さとともに行く独特の走り。頑張りすぎてゴツゴツ、言い換えればイライラさせられるものとは違い、ヒトの五感に不快感を与えない動き方をするから、疲れないし、運転にリズム感を取りやすく、故に退屈させず楽しくすらある。アルファ本来の楽しさとはそうした種類のもの。なんでもかんでも速く"駆け抜け"れば良いというものではないのだ。ただし上級グレードになるとまた味付けが違うらしいから、そちらを選ぶ際にはよくチェックしてほしい。




 ハンドルは軽いが、D.N.A.をダイナミック側にするとしっかりと手応えが来る。それもしっかりアルファのあのネットリ感(?!)を再現しようとしている。個人的にはダイナミック側のほうがこのクルマをこのクルマらしく走らせられるように思う。



結論

 今やワーゲンやBMWから乗り換えても違和感を抱かずに済むだけの洗練を身に着けている。デザインは美しく、効果的にアルファらしいところが感じられて、充分に「伊達」でもある。ましてや価格も少量輸入を考えれば充分に安いと個人的には思える。他の国のクルマと同じ土俵に乗せてみれば大いに個性的だし、競争力はあると思う。故障に対しても以前ほど身構える必要はなさそうで、それらは製品の進化としてたいへん喜ばしいことだ。






 反面、イタ車に乗る前には必ず、気持ちのスイッチを切り替えなければならないようなところがあったが、このクルマにはそれがない。なくても確かに困らないし、ないほうがいいこともあるだろう。しかしそれは「伊達」なイベントとしてけっこう大きなウエートを占めるものではなかったかな、そんな思いが残ったのもまた事実である。



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5段階評価/★★★
☆☆
無難にソツなくまとまっていること(-1)
無難にソツなくまとまっていること(+1)
エンジンにあまり辛味が効いていないこと(-1)
黒しかないインテリア(-1)



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試乗データ

試乗日:2012年3月1日
試乗車:アルファロメオ・ジュリエッタ・スプリント(車両本体価格:3,180,000円)
型式:ABA-94014
エンジン:940A2
トランスミッション:アルファTCT(2ペダル・乾式デュアルクラッチオートマチック)
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4350×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
最小回転半径:- m
車両重量:1400kg
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:ロッソ・アルファ(アルファレッド #289)
内装色:ネロ(ブラック/ファブリック)
装着されていたオプション:
 ナビゲーションシステム+専用パネル



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輸入元オフィシャルサイト
http://www.alfaromeo-jp.com/jp/#/home



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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