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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#095 知的に贅沢

VW パサート ヴァリアントHighline ~ 試乗インプレッション(2012.5)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 省燃費化の一つの回答はハイブリッド。しかしハイブリッドは街中におけるストップアンドゴーの繰り返しで減速時の回生充電を促し、そこで溜めた電気を使いガソリンを節約する反面、特に高速でのアクセル踏みっぱなしという条件ではガソリンを喰う比率が大きい。パサートのように排気量を大幅に下げて過給器で補い、高速連続走行時でも効率を良くしようという手法は「燃やしている時」の効率を徹底して上げることが目的。これは走り出すと一度の走行距離が長くアクセルを開けっ放しというお国柄。同じエコカーだがアプローチは全く違う。付け加えるが、マツダがスカイアクティブで内燃機関の効率を上げる施策を展開しているのも、マツダ車が欧州市場で多く売れていることと無関係ではないだろう。



エクステリア



 質素がウリだったフォルクスワーゲンは過去のもの。ドイツの国民車がこれだけ立派な仕立てなら、ドイツ人の生活レベルも相当に上がったのだろう。ゴルフ2やサンタナの頃の純朴さが懐かしい。




 伸びやかなシルエット。しかしいたずらにイジクリ倒していない。そこは大人。




 でも日本車に比べると質素かも。



視界・扱いやすさ



 ハイラインのダッシュパネルには木目が奢られているがこれはフェイク。これだけ天を仰ぐ角度なら紫外線の影響で本木目はあっという間にダメになってしまうのでフェイクで正解。装飾は日本車やライバル車に比べると質素だし、あまり見栄を張りすぎていない、ほど好さ。本革巻きステアリングホイールの手触りは優しく、しっとりとしている。パーキングブレーキはシフトレバー脇の小さなスイッチで操作する。




 ダッシュボード中央のアナログ時計。小さなアクセサリーは控えめな室内に一点目を惹く。




 Aピラーは存在感あり。



インテリア・ラゲッジ



 ナパレザー張りのシート。体圧のかかるあたりのステッチを細かくして柔らかな凹凸を作り、よりフィット感を高めようと言う目的。その目的どおりフィット感は上々。それでいてフレームがガッシリとしていて、骨太感の演出など、ドイツ車特有の安心感もまた特徴。

前席ヘッドルーム:こぶし1つ




 前席パワーシート標準(ハイライン)。このスイッチはランバーサポートの調整。前後の張りの強さは勿論、好みの高さにも調整することができる。便利。




 後席は広々というより常識的な広さ。ちなみにカムリほどスカスカのガラガラではない。とはいえこれで何の不足も無い。センタートンネルの存在感は最近のクルマにしてはあるほうかな。

後席ヘッドルーム:手のひら2枚/膝前:こぶし1つ+アルファ




 決して狭いラゲッジスペースではないが、でも、あの90年代のガランドウな広さを知る身には少し物足りない。あのガランドウこそパサートの持ち味だったのに。面影も無い。後席座面を持ち上げて背もたれを倒すとフラットフロアに。アンダーフロアにも広いスペースがある。(スペアタイアレス)



エンジン・トランスミッション

 1.4リッター4気筒ターボTSI。こじんまりと収まっているエンジン。それもそのはず本来ならポロのエンジンなのだから。しかしこの小さな心臓から生み出される力は1430kgの車体を軽々と余裕を持って転がすことを可能としている。ターボの過給圧コントロールはさすがに手練という感じで、負荷をかけていくとしっとりと、密度の濃いトルク感でスルスルと流れをリードする。街中のストップアンドゴーに飲み込まれながらの試乗でメーター読み10km/Lを記録した。




 7段の乾式DSGの熟成度も高い。この分野のパイオニアというだけのことはある。でもクリープはニガテと見えて、任意でON/OFFできる後退防止装置の手を借りながら走ったほうが不安は少ないだろうし、クラッチにも負担をかけないだろう。もはや当たり前になったアイドリングストップあり。作動になんら問題は無い。



足廻り



 試乗車のタイアは235/45R17サイズ(コンフォートは215/55R16)。残念ながらすこしタイアが勝っているように感じるシーンがある。微小突起にドタドタと軽く突き上げを寄越すのと、大きなうねりを寛容に受け流す器量の面でやや不満あり。一段高いフラットさがほしい。サスペンションストロークとロールセンター、重心位置の相関関係、その煮詰めがもう一歩と言う感じ。音や振動については充分合格。



結論

 これだけ体格が良いのに1.4リッターと聞いた時はちょっと衝撃的だったが、動力性能は充分どころかまるでこの車格のものとして相応しいだけのものはある。ガソリンエンジンの効率を高めていくというアプローチはある意味正攻法。しかしどの手法が絶対正論ということではなくて、今のこの時代に在っては様々なアプローチで正解を探していく、あるいは省エネ効果を高めていくことに手段は選ばず、というスタンスをもって「進むべき道」と考えるべき。だからこのTSIが最後の答えであるはずはなく、これからもまだまだ新しい技術が出てきてはその真価を検証する、そんな時間が暫く続いていくのではないだろうか。









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5段階評価/★★★★
・もう一歩の足回り(-1)
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試乗データ

試乗日:2012年5月17日
試乗車:フォルクスワーゲン パサート ヴァリアントHighline(車両本体価格:3,960,000円)
型式:DBA-3CCAX
エンジン:CAX
トランスミッション:7段DSG
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4785×1820×1490mm
ホイールベース:2710mm
最小回転半径:5.3m
車両重量:1430kg
JC08モード:17.6km/L
ボディタイプ:ステーションワゴン
ボディ色:リフレックスシルバーメタリック<8E>
内装色:ブラック/レザー<QQ>
装着されていたオプション:
 バイキセノンライトパッケージ(157,500円)
 フロアマット(14,000円)
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メーカーサイト

http://www.volkswagen.co.jp/cars/passatvariant/main.html
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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。




前田恵祐


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