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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#123 モノ分かる大人を振り返らせるか


ホンダ アコード ハイブリッドLX ~ 試乗インプレッション(2013.6)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 アコードは暫くの間日本市場で居心地が悪そうだった。それは日本でセダンが衰退し始めていたことと、アコードというブランドが主に海外で人気の高いブランドであるが故に海外市場を中心に開発されていたという経緯もある。かくして暫くの間日本においてはやや低調なアコードだったが、今回のモデルチェンジでハイブリッド専用車として生まれ変わった。しかもそのハイブリッドシステムはまったく新しいものらしい。



エクステリア



 インサイトを少し大人にしたようなマスク。しかし全体の雰囲気はいたって落ち着いた大人のサルーン。わざとらしい造形や遊びの無い、したがって安っぽくないサルーンに仕上がっている。一定の年齢に達した大人が安心して着こなせるだけのものにはなっていると思う。




 ちょっとBMWの影も。




 テールはいたってオーソドックス。しかしこれでいい。



視界・扱いやすさ



 運転席からはボンネットを視認できる。ナビは全車標準。ハンドルは手動によるチルトとテレスコピック。シートは前後背もたれ座面の高さ(前後)を電動調整できる8ウェイパワーシート。助手席は前後とリクライニングの4ウェイパワーシート。ライトコントロールは「0」→「車幅灯」→「AUTO」→「前照灯」の順。パワーウインドウは全席オート。ホンダも電気式パーキングブレーキを採用してくるかと思っていたが、普通の足踏み/二度踏みリリース式。エクステリア同様、全体的に落ち着いていて雰囲気がいい。




 ホンダはトヨタに次いでピラーを細くすることに熱心。




 Cピラーは本当に細くなった。



インテリア・ラゲッジ



 前席はサイズも大きめでゆったり座れる。腰と尻の押さえがしっかりしていて、サイドサポートはそれほど強くないが安心してドライブできる。個人的には座面前端に向かってもう一歩ガッシリ感があるとなお良し。布シートの表皮には再生PET素材を用いるなどしている。ちなみにシートは布でもドア内張りは合皮。
前席頭上空間/こぶし1つ半




 後席はもともと広かったからこの新型になってなお広くなった感じはしないがそれでも十二分。後述静けさ滑らかさとあいまってショーファードリブンとしての使用にも耐えうるのではないかとさえ思わせる。レクサスやクラウンのような高級車よりずっとこちらのほうがヘルシーに見えるだけ、今の時代、社用車としての適性も高いのではないか。
後席頭上空間/手のひら2枚
後席膝前空間/こぶし2つ




 トランクルームはご覧の通り。バッテリーは思いのほかスペースを食っていてゴルフバッグは3つまでとの由。



エンジン・トランスミッション

 発電用と駆動用のモーターを別々に備え、エンジンは主に発電用モーターを回すことに使われるという基本構成。高速域などよりパワーが求められるシーンに限ってはエンジンの動力も駆動力として加わる。これまでホンダが用いてきたエンジン主体のハイブリッドとは全く違うし、トヨタ式とも異なる。エンジンはここへ来て一段と「補機」に近づいた。




 してその実。走ってみるといたってスムーズ、そして当然静か。エンジンは発電用モーターを回す為に、要求される加速力とはほぼ関係なく回っては止まる。そのエンジンも静かで作動時のショックはない。走り味は純然たるEVに近く、またこれまで多くのハイブリッドカーが持っていたアクセルの反応やブレーキの効き具合の不自然さはほぼ完全に払拭されている。もちろんモーター特有の力強さも兼ね備え、しかもその力はどの領域からもスムーズかつ静か、レスポンシブに取り出せる。高速の合流などは見所。新しいシステムだが極めて完成度の高いパワーユニットである。参考までに、市街地メインの試乗中、燃費計は常に22km/L付近を指していたことを付け加えておこう。



足廻り



 どちらかというと硬めで上下動もはっきりとある。ただし角は丸まっているからまったく不快ではない。しかしこの部分がより滑らかにかつしなやかに洗練されたとしたら、正統派高級サルーンとして文句なしだったのにな、とは思う。上述の通り電動サーボのブレーキに違和感無し、ハンドルは軽いが適度に情報が伝わってくる。ピッチングやロールスピードのチェックも充分で、ドライバーズカーとしてみても自然に、またスポーティに立ち回れるが、個人的にはもう少し乗り心地の振ったほうがこのクルマのプレステージを一段上げると思う。



結論

 期待を裏切らないパワーユニットの完成度と落ち着いた大人の雰囲気を持つスタイリングとインテリア。価格的にもライバルははっきりとトヨタ・カムリだが、パワーユニットの完成度から言ってこちらのほうが一歩抜きん出ていると思う。この種類の中型サルーンは今までずっと不遇をかこってきたが、ハイブリッドという武器を得て大人を説得できる直球勝負の製品として息を吹き返した観がある。アコードも、ハイブリッドを得たからこそそれ以外の要素を自信を持って作り上げられたような気がするし、それはカムリにおいても同じだ。




 自信なく、お茶を濁し、あるいは自らを失って彷徨っていたサルーンの時代は終ろうとしている。フォーマルウェアをビシッと着こなせてこそ本物の大人というものだ。モノ分かる大人が振り返る仕立ての良いのアッパーミドルサルーンとしての再出発、混みあっている試乗予約や事前受注の情況からも、ひとまず成功といえそうだ。



10項目採点評価

基本ポリシー >>> 9
スタイル/インテリア >>> 9
エンジン/トランスミッション >>> 10
NVH >>> 8
ドライバビリティ >>> 10
スペース >>> 8
気配り度 >>> 8
先見性 >>> 8
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 8



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試乗データ

試乗日:2013年6月24日
試乗車:アコード ハイブリッドLX(車両本体価格:3,650,000円)
型式:DAA-CR6
エンジン:LFA-MF8
トランスミッション:-
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4915×1850×1465mm
ホイールベース:2775mm
最小回転半径:5.7m
車両重量:1620kg
タイア:225/50R17 94V
JC08モード:30.0km/L
ボディタイプ:4ドアセダン
ボディ色:モダンスティール・メタリック
内装色:ブラック/バイオファブリック+再生PET
装着されていたオプション:フロアマット・プレミアム(44,100円)



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メーカーサイト

http://www.honda.co.jp/ACCORD/


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。





前田恵祐



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