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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#155 良いとこ取りかどうかは疑問


 ホンダ・ジェイド ハイブリッドX 試乗インプレッション (2015.3)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 オデッセイがスライドドアを持つ”ふつうの”ミニバンになったのを見て正直少し残念に思っていた。ミニバンという生活臭のする乗り物にきわめてパーソナルな雰囲気を与え、持ち主の個性を引き立てるような豊かな印象のクルマ、それが三代目、四代目までのオデッセイだった。人をたくさん乗せることができ、同時に所帯染みていないものを、という要求はやはりあったようで、新しく誕生したジェイドはこれまで5ナンバーミニバンだったストリームと、四代目までのオデッセイを足して二で割ったようなクルマになっている。



 エクステリア



 グレイス同様これもフィットをベースとしながら3ナンバーの寸法を持ちゆったりとデザインされている。最近のホンダはいわゆる”ヘン顔”をやめる方向のようで、穏やかな表情のマスク。




 意図的に下げられたと思われるウエストライン。確かに開放感を演出できるかもしれないが、私には「伸びたパンツのゴム」みたいに思えてやや弛緩した印象を抱く。アンダーラインにクロムなどで効果的に加飾をほどこすなどするとまた印象が違ったかもしれない。




 これにフィット型の縦型テールランプを与えると、そのまんまボルボになってしまうからやらなかったのかもしれない。



 運転環境



 ハンドルはチルトとテレスコピックを一度に調整できる。運転席はスライド、リクライニング、高さ(前後端個別)それぞれの調整が電動。また試乗車には本革内装と前席シートヒーター付き。パワーウインドウは全席ワンタッチ。シフトレバーはプリウス同様の操作様式。駐車ブレーキは足踏み式で解除は二度踏み。ナビはスマホ式タッチパネル。しかしエアコンはプッシュスイッチ。このクルマには道路標識の表示がメーターパネル内にも設置され、制限速度の認識に役立つ。そのメーターパネルも視線移動が少なくたいへんよろしい。




 Aピラーはかなり傾斜していてダッシュボードも奥行があり、前席ではやや圧迫感がある。Aピラーのフロントガラスに対する角度がよく映り込みは比較的少ない。が、ダッシュボードはたいへんよく映り込む。また、Aピラー付け根の三角地帯はガラスを設置するでもなく、かといって細くしきれているでなし、やや斜め方向の視界を遮る。




 目視後方視界。各ピラーの断面積はあるものの、内張りがすっきりしているためあまり邪魔に感じないのが美点。



 インテリア・ラゲッジ



 あまりごちゃごちゃしておらず、スッキリとした印象のインテリア。黒のほかにアイボリーのカラーもあるが、選択できるボディ色が限られているのが残念。




 フィット系から明らかにアップグレードされている前席。サイズ、掛け心地とも不満はなく、とくにヘッドレストを含めたバックレストの、後頭部、背中、腰にかけてのサポートが秀逸。本革も悪くないが、このクルマの場合ちょっと冒険的な色合い素材のテキスタイルのほうがよりそれらしいと思う。

・前席頭上空間/こぶし1つ半




 二列目は左右セパレートで一人ずつ個別にゆとりのあるシートサイズ、空間が用意されている。やはり前席同様にかけ心地よろしく、ヘッドレスト、バックレストの具合がいい。スライドレールをV字に設置することでロングスライドを可能としているが、実際はベンチシートの三名がけを求める声の方が多いのではないだろうか。

・後席頭上空間/こぶし1つ半
・後席膝前空間/こぶし2つ半




 三列目。体型が太めの筆者でもちゃんと座ることが出来る。頭上はちょうどバックドア上部の天窓の位置で頭は支障しないものの、陽射しを受けることになる。二列目で十分にスペースを確保した上での三列目はギリギリだがつま先を二列目下に収めることが出来るなどして、想像以上に窮屈感は少ない。ヘッドレストもきちんと後頭部の位置まで来るし、総じておざなりではないが、実質バックレスト上端とバックドアは接触するギリギリであり、後突を食らうと無傷ではいられまい。




 三列目を収納した状態ではご覧のとおりのラゲッジスペース。この状態では四人乗り。





 三列目を引き上げるともう殆ど荷物を乗せることはできない。ま、実際問題、のべつまくなしにフル乗車するというより、出先で雨に降られ、傘を持っていなかった人を駅まで同乗させる程度の使い道。しかしそれでも合法的に親切ができるのだから無駄ではあるまい。



 エンジン・トランスミッション



 フィット/グレイスのハイブリッドと基本共通のものだが、エンジンはアトキンソンサイクルではなく直噴となる。こちらのほうがエンジン単体の馬力が出ており荷重増に対応。それでいて、フィット/グレイスで感じた、EV発進後にエンジンが始動した際のギクシャクはかなり押さえ込まれていてほぼ気にならないレベルに仕上がっている。騒音も少なく、さらに静粛、かつパワフル。とはいえやはりこの方式もあくまで妥協の産物でしかなく、基本トランスミッションなしのモーターのみで走り、エンジンは発電に専念、というシステムに行く行くは収束していくと思う。




 燃費を計測するために燃費計のリセット方法がわからず、この12.7Km/Lという表示はこの個体の生涯燃費。試乗開始時は12.3Km/Lだったから、試乗中の燃費はそれ以上を記録していたと考えていいだろう。


 足廻り



 物理的なストラットの自由長がどれほどあるのかはわからないが、明らかにストロークの短いバネ系をやや硬めに設定して、あとはブッシュやタイアで角の尖ったショックや突き上げを減衰する、というセッティングの方向とお見受けする。上下動、揺すられ感もあり、アシは綺麗に動かせてはいない。215/50R17のタイアサイズも横方向にオーバーサイズの印象で対地キャンバーとの折り合いが悪くややバタついている印象。このクルマは立体駐車場に入庫が可能であるということが大きなウリだから全高はヘタに上げられないし、その意味でサスペンション領域での車高調整もややシビアであったのかな、という気がする。その分、真の走りの良さは後退していると言わざるを得まい。




 結論

 ジャストサイズで機動性あるストリーム。流麗で豊かな印象の旧型オデッセイ。即ち両者の良いとこ取りでジェイドというクルマが形作られたわけだが、総じてデザインが行き届いた、それでいてこれみよがしでないセンスの良さのある、スタイル、インテリアと、ゆとりの空間、あるいはそれ単体で非常に出来の良いシートなど、他ではなくあえてこれにしたいと思わせるだけの魅力を備えていることは間違いない。しかし・・・






・・・足廻りはもう一歩煮詰められる余地がありそうだし、間取りとして、二列目がセパレートというのはちょっと使い勝手が悪いと思う人もいるかもしれない。ま、そのあたりは今後の展開をひとまず見守ることとして、ところがそれでもイマイチ心が突き動かされないのは、いくらハイブリッドであるとはいっても、旧型オデッセイの中級グレードをすんなり買えてしまうくらいの、この部分に限っては良いとこ取りになっていない価格設定が、どうにも喉元に引っかかっているからかもしれない。







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 10項目採点評価

ポリシー >>> 7
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 8
走りの調律度 >>> 6
運転環境と室内空間 >>> 6
ヒトへの優しさ度 >>> 6
卓見度 >>> 7
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 6






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 試乗データ

試乗日:2015年2月27日
試乗車:ホンダ・ジェイド ハイブリッドX
車輌本体価格:2,920,000円(OP含まず)
型式:DAA-FR4
エンジン:1496cc直列4気筒DOHC直噴+交流同期電気機
トランスミッション:7段デュアルクラッチ
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4650×1775×1530mm
ホイールベース:2760mm
車輌重量:1510kg
最小回転半径:5.5m
タイア:前後215/50R17 91V(アドバン・デシベル)
JC08モード燃費:24.2km/L
燃料タンク容量:40L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:5ドア3列シート6人乗りミニバン
ボディ色:マンダリンゴールド・メタリック
内装色/素材:ブラック/本革(オプション)
装着されていたオプション:
     Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器
     本革シート


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 メーカーサイト

http://www.honda.co.jp/JADE/



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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。









前田恵祐
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