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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#154 自動車界のAneCan


 ホンダ・グレイス ハイブリッドEX 試乗インプレッション (2015.2)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 セダンが売れなくなった理由は様々あって、ミニバンやSUVのようなクルマのほうが従前の生活感とは異なる新しさを提案していて、人々もそれを支持したこと、またはそれを支持しない人はすなわち保守的で、簡単に言うと若々しい感覚でなく、そうした人たちが頑なにセダンを選ぼうともしたからセダンはさらに老いた商品に成りおおせてしまった。しかし、外国には積極的に選びたくなるような美しさ、新しさをもったセダンはあったわけで、日本のセダンがひとえに老いてしまったのは、「セダンとは保守」と決めつけてやはり積極的に新たな魅力を生み出そうという気力がなかっただけなのだと・・・グレイスハイブリッドを見てそう思う。



 エクステリア



 フィットがベースであることがアリアリとわかる、しかしフィットに非ず。こなれたデザイン手法を用いながらほのかに上品さや落ち着きを与える絶妙なサジ加減。クリーンで質感もあり、古臭くもないという、至極マットウでいて今までは得難かったセダンとしてのデザイン。しかし試乗車はMUGENのエアロやグリル、ホイールを組み合わせてちょっと”ヤル気”っぽくなってしまっているが。




 フィットにただトランクをくっつけただけではない、安っぽくないデザイン。こじんまりとしていてジジムサくなく、乗り手を選ばない受け皿の広さがある。




 背が高く寸づまりながらデザインの縦横比のバランスが良く、たとえばこのあいだのCLAのようにはなっていない。このクルマ、東南アジア向けにすでに過去三世代、「シティ」の名で売られていたモノの最新モデルで、個人的にこれのひとつ前のモノの写真を見て、日本にも入れたらいいのに、と思っていたところ、当代からグレイスの名で売られるようになった。イマ風に小型セダンをカタチづくるとこうなる。スモール点灯時、制動灯は個別に点灯する。



 運転環境



 ハンドルはチルトとテレスコピックを一度に調整できる。運転席はラチェット式高さ調整が可能で、このグレードには前席シートヒーター付き。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。シフトレバーはプリウス同様の操作様式。駐車ブレーキはセンターコンソールにレバーを配置する従来の機械式。ナビ、エアコンはフィット同様スマホ式。押した手応えで確認できない代わりに、指で触れるとピッピと音がして知らせる。が、やっぱり走行中は視線を固定する時間が長くなりがちで、これは自動車用の操作系統として理想的とは言い難い。ハザードスイッチやミラー調整は普通のボタンであるところを見ると、重要なところはちゃんとしたボタンにしてあるのかな、と思う。




 Aピラーはかなり傾斜していてダッシュボードも奥行があり、セダンというよりやはりミニバンに近い運転感覚。Aピラーは後傾角度が立っていてかつ短いほうが、たとえば横断歩道の歩行者の発見認識に役立つが、これはそういうタイプではない。ピラー自体は細めだがフロントガラス面に対する角度が接近していて白く映り込む。それはダッシュボードも然り。ただし、フロントガラスは極端に湾曲してはいないから見切りは良く、車両感覚は比較的掴みやすい。




 出来うる限り斜め後方の目視視界を確保しようと努力された痕跡あり。リアドアガラスも後席搭乗者の頭の横付近まで切り込んであるし、リアガラスの面積も広い。むろんトランクを視認できたりはしないが、トランクそのものは短く、Cピラーの延長上に車両後端があるという認識でほぼ間違いはなかろう。



 インテリア・ラゲッジ



 ダッシュボードはフィットとほぼ同じ構成。個人的に最近のホンダ車のダッシュボードデザインは主張が強すぎてあまり好きになれない。シンプルで機能的なのが一番、その理由はやはり運転視界に注意を払うべきだし、ダッシュボードより景色のほうが大事だもの。




 フィットと同じシートに見えるが、心なしか座り心地がしっかりしていて、走行中の振動の吸収なども一枚上手な印象。簡単に言うと着座感がちょっと高級。サイズも十分だしリラックスして身体を委ねられる。

・前席頭上空間/こぶし1つ半




 後席もシートサイズに不満なく着座感良し。ニールーム、横方向の余裕とも言うことなしだが、なにゆえかヘッドルームはミニマム。せっかく背の高いセダンにしたのに、これではね。もう少しルーフを伸ばせば、などというと、ヒドく格好悪くなっちまうのであろうか。嗚呼ザンネン。

・後席頭上空間/天井に髪が触れる
・後席膝前空間/こぶし2つ半




 トランクスペースにゴルフバッグは3つまでとの由。ま、それでも十分に広いが、さらにいうならヒンジはアームでなくパンタグラフにダンパーでお願いします。



 エンジン・トランスミッション



 1.5リッター、アトキンソンサイクルにモーター、トランスミッションはツインクラッチ。フィットと同じもので、走りっぷりもほぼ同じ。モーターのみで発進できるようになったことはメデタイが、一定開度のスロットルでも途中でエンジンがかかったときの制御がイマイチで、ちょっとギクギク。それも現行フィットのデビュー当時と同じ。まあ慣れてしまえば。むしろパワーを解放したときの伸びやかな加速フィーリングは、敢えてそれを楽しみたくなるだけのものがある。




 60キロ制限の幹線道路と小さな路地、ちょっとした山坂道、またブツ撮り中もエンジンをかけっぱなしにして15.6Km/Lのメーター表示。ブツ撮り前までは17Km/Lあたりまで伸びていた。


 足廻り



 試乗車は先述のとおりMUGENの17インチアルミホイールにコンチネンタル・コンチスポーツコンタクトを履いており、この項目はあくまでご参考までに、と申し上げたいところなのだが、このインチアップスポーツタイアをじつにノーマルサスペンションが難なく履きこなしていたのには感心した。基本的にばねダンパー系の作動精度が高く、路面追従とハーシュネスの処理が秀逸なのと、アームやストラットの取り付け剛性も高くソリッドな印象が強い。車体もしっかり鍛え上げられていると見えて、強固な一体感、綺麗に動くアシ、フラットに保たれる上屋、に加えスポーツタイアのダイレクトさも加わり、ちょっと日本車離れした身のこなしを見せつける。フィットよりはっきりとマナーがいい。




 結論

 老若男女、どの世代の男女が乗ってもサマになるマットウなセダンとして貴重な存在。フィットではちょっとカジュアルすぎてね、でもジジムサいのはイヤだし、という声にジャストフィットの仕立て。自動車界のAneCan。そのかわりちょっと高いが、高い分だけ、ところどころではあるけれどアップグレードされてはいる。でもフィットから引き継いだ無視できない弱点もそのままで、とくに低速走行時のエンジントランスミッションの躾けは気になるし、あるいはグレイス固有の問題として天井に頭がつかえる後席など、ザンネン無念な箇所も。






 ただし個人的に運転するならフィットよりこちら。その心は、足廻りに関してこちらのほうがよりリファインされていることと、スタイリングから来るほのかな上品さや落ち着きが自分の感覚には合っているから。ただ単にフィットにトランクを取り付けただけ、と思って乗ると嬉しさは大きいかもしれませんよ。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 8
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 7
音・振動の処理 >>> 9
走りの調律度 >>> 9
運転環境と室内空間 >>> 6
ヒトへの優しさ度 >>> 6
卓見度 >>> 7
完成度 >>> 7
バリューフォーマネー >>> 7






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 試乗データ

試乗日:2015年2月13日
試乗車:ホンダ・グレイス ハイブリッドEX
車輌本体価格:2,210,000円(OP含まず)
型式:DAA-GM4
エンジン:1496cc直列4気筒DOHCアトキンソンサイクル+交流同期電気機
トランスミッション:7段デュアルクラッチ
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4440×1695×1475mm
ホイールベース:2600mm
車輌重量:1200kg
最小回転半径:5.3m
タイア:前後205/45R17 W XL(コンチネンタル・スポーツコンタクト※ディーラーOP)
JC08モード燃費:31.4km/L
燃料タンク容量:40L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:4ドアセダン
ボディ色:ホワイトオーキッドパール(32,400円高)
内装色/素材:ブラック/プライムスムース×ファブリック
装着されていたオプション:
     Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器
     以下MUGENブランド
       フロントアンダースポイラー
       サイドスポイラー
       リアアンダースポイラー
       フロントスポーツグリル
       17インチアルミホイールMDG
          +コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト205/45R17タイア
       ドアバイザー
       エンブレム

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 メーカーサイト

http://www.honda.co.jp/GRACE/






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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。












前田恵祐



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