この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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遡ればキャブオーバー型ワンボックスカー、「タウンエース」であり、その歴史は40年近いものになる。現行モデルは2014年1月にフルモデルチェンジされ、2月にハイブリッド車が発売された。アルファードやエスティマにハイブリッドが既にあり、それらはやや高級なミニバンとされてきたが、ノアのような実用的な車種にまで今回ハイブリッドが降ろされてきた。システムは従来からあるTHS2の1.8リッター版だが、バッテリーなどの補機を工夫し、広い客室に侵食しないように工夫されている。
■ エクステリア
広くなったグラスエリアが特徴的。見た目からして見晴らしのよさそうなクルマである。顔つきは写真ほど大ぶりではなく、実際には穏やかな表情と思えた。
15インチホイールであるといわれればいかに車体が大きいかがわかる。5ナンバーサイズに収めるという制約と客室内の広さを確保するという制約、またデザインのオリジナリティを創出するという目標、さまざまなしがらみのもとデザインがなされている。微妙なうねりやプレスラインはせめてもの独自性。
サイドのウエストラインから斜めに降りてくるラインが特徴的。あとはもう、リアゲートの間口を確保できれば、というデザイン。多くは望めない。
■ 視界・扱いやすさ
オーディオレス4スピーカーが標準で試乗車はディーラーOPナビ装着。シフトはプリウス式。駐車ブレーキはペダル式で解除は二度踏み。エアコンのコントローラーはコンパクトかつ明瞭にまとめられているプッシュ式でブラインド操作可能。この時の動線上にシフトレバーが支障するが、短い為影響は少ない。ガソリン車のシフトレバーは通常の長いもののため、やや邪魔か。パワーウインドウは前席二列目ともワンタッチ。
Aピラーは方向の視界。ピラー自体は意識的に細められ、角度も良いためフロントガラスへの写りこみはほとんどない。また黒く塗られている為目立たない。優秀。が、ダッシュボードは写りこむ。黒いからあまり気にはならないが。
最後部ピラーの太さ。もう少し各ウインドウの角を削れればなお良い。ここは後席乗員の安全性を左右するため太くせざるを得ないのだ。
■ インテリア・ラゲッジ
試乗車の内装色は標準色のダークブルー/ブラック。この他にベージュもあるが汚れを気にしてこの黒系を選ぶユーザーが多いそうだ。運転席と助手席の間に荷物置き場があるが、この下にバッテリーを設置する。が、高さも低くほとんど支障しない。低められたウエストラインと三角窓は効果的に開放感を演出する。乗っていて気持ちのいいクルマだ。
前席はやや小振りだが過不足なく身体を支え、剛性もある。サイドサポート、座面の角度とも適度で大きな不満はない。運転席にラチェット式リフターあり。フロア高は390mmでステップを必要とせずスムーズに乗り降り可能。
・前席頭上空間/こぶし2つ+アルファ
ハイブリッド車は今のところ二列目セパレート仕様の7人乗りのみ。その二列目は810mmのロングスライドを採用。ごらんのような前方空間を実現する。むろんこの時3列目は側面に跳ね上げておく必要がある。セパレートシートは前席とかけ心地の遜色が無く、かつ走行時の各運動軸(ヨー、ピッチング等)の中心に近いため遠心力が最も少ない特等席。前方の眺めもよく、居心地きわめて良好。
・二列目頭上空間/こぶし2つ+アルファ
・二列目膝前空間/平時でもこぶし2つ以上
三列目は多少かけ心地は劣るという程度で、長時間、常用可能な居住環境。さすがに三名がけは厳しいが全六名でのロングドライブは快適にこなせよう。
・三列目頭上空間/こぶし2つ
・三列目膝前空間/こぶし1つ以上
ラゲッジスペース。さすがに三列目使用時には広々とは行かない。大きな荷物を積む際には三列目を跳ね上げることになる。ライバルは三列目を床下に収納できるものもあるが、これはやや旧式。
■ エンジン・トランスミッション
基本的にプリウスと同じ、とはいえ適切にブラッシュアップが図られているようで、もはやHV特有の奥歯に物の挟まったようなアクセル感覚はなくなった。EV駆動とエンジン駆動の境目もアクセラほどではないがスムーズで、まったく痛痒のない走り。もう少し透過音を抑えられたならなおよし。
試乗中の燃費は17.6Km/Lだった。
■ 足廻り
この体格にして15インチとはややプアな印象も無くはないが、ボディ、サスペンションの取り付け剛性も高めの印象で従前あった華奢な印象は影を潜めている。路面によってはロードノイズがやや耳に入るが、それでもこの箱型の車体にして騒音、振動ともにしっかり抑制している。アシは硬め。引き締まった身のこなしで着座点の高さからくるグラつきを抑制。ハンドルの反応も穏やかだが路面の印象もきちんとつたえてくる自然な性質を持っており、大柄でブカブカなクルマを運転している印象は薄い。全体的に優しく素直な印象で、上手くまとめていると感じた。
■ 結論
ライバルも多く激戦区の5ナンバーワンボックス。時代とともにスタンダードなファミリーカーとしての認識が浸透し、走りや取り回しへの妥協も少なくなってきた。誰がドライブしても素直で自然な印象をもてるこのクルマの仕上がりはまさしくトヨタらしく優等生。実際のところ指名買いというより、ライバル各車との比較、それも見積もりの比較や販売店の対応などで決められていく種類のクルマだろう。
トヨタディーラーのすぐれた接客スキル、クルマそのものの素直な性格、あとはお値段の折り合いがつけば、この最新のハイブリッドワンボックスは良い買い物になることだろう。突出した魅力は無くてもいい。慎ましくも穏やかな日々を演出するファミリーカーとしての資質は高いクルマだと思う。
■ 10項目採点評価
ポリシー >>> 10
スタイル・インテリア >>> 8
エンジン・トランスミッション >>> 9
NVH >>> 8
ドライバビリティ >>> 9
スペース >>> 9
気配り度 >>> 9
先見性 >>> 8
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 7
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■ 試乗データ
試乗日:2014年5月17日
試乗車:トヨタ ノア HYBRID X (車輌本体価格:2,931,429円)
型式:DAA-ZER80G-APXEB
エンジン:2ZA-FXE+5JM(直列4気筒1797cc+モーター)
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4695×1695×1825mm
ホイールベース:2850mm
車輌重量:1610kg
最小回転半径:5.5m
タイア:195/65R15 グッドイヤー
JC08モード燃費:23.8km/L
ボディタイプ:5ドア(2ヒンジドア+2スライドドア+バックドア)ワンボックス
ボディ色:ダークシェリーマイカメタリック<4W4>
内装色/素材:ダークブルー&ブラック/ファブリック
装着オプション:
9インチスマートナビ「NSZT-Y62G」(244,125円)
11型後席ディスプレイ「V11T-R62C」(96,600円)
ETC車載器(ビルトイン,ボイスナビ連動)(25,812円)
バックガイドモニター(27,648円)
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■ メーカーサイト
http://toyota.jp/noah/
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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。
前田恵祐
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