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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#143 パステルカラーも着こなせる大人に


ダイハツ コペン ローブ 5段マニュアル 試乗インプレッション (2014.6)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 現在のところ軽自動車唯一のスポーツカー。初代コペンは小さなボディに電動開閉式ハードトップを備え、ユーモラスなスタイリングと軽快な走りで一気に人気が拡がった。10年間生産され、2012年に一旦フェードアウト。昨日フルモデルチェンジされ、新たに着せ替え可能なボディをまとって再登場とあいなった。注目度抜群のこのマイクロスポーツ。今後ライバル他社も同じようなモデルをラインナップすることが噂され、にわかに活気が蘇りそうな雰囲気だ。



 エクステリア



 写真で見るより実物は丸く、引き締まった印象がある。特徴的だったあの丸目のマスクはひとまず来年までオアズケとの由。来年、別バージョンとして丸目が復活する予定。新型「ローブ」の異型ランプ仕様はこのクルマに常識的で大人っぽい印象を与えている。




 フロントフェンダーからトランクにかけてのプレスラインが作り出す陰影が美しい。シルバーメタリックあたりを選ぶとその良さがいっそう引き立つだろう。サイドプロポーションはあくまでも常識的なオープン2シーターのもので冒険はしていない。しかしこのあたりでひとつ、ルノー・ウインドと肩を並べられるような斬新な提案があっても良かった気はする。外板色は銀が二種類にレッドパール、パールホワイト、オレンジメタリック、イエロー、ブラックマイカ、ブルーメタリックという8色のラインナップ。内装の項でも触れるが、パステル系など、よりポップなカラーがあってもいい。ルーフはどの色を選んでも黒。




 格納式ルーフを収めるリアスタイルは難しいところだが、今回はやや立ち気味にしてトランク容量を稼いだ格好。ソフトトップにしてしまえばトップの収納場所のためにいちいちトランク内部を仕切る必要もなく簡単、かつ軽く仕上がると思うのだがそれはやらないしニーズもあまりないらしい。




 上の画像はスモールランプ点灯状態。ブレーキを踏むと中央寄りの6連LEDが独立点灯し、面積で制動を知らせるパターンとなっている。



 視界・扱いやすさ



 なかなか思い切ったデザインのダッシュボード。試乗車はオーディオを備える為の「箱」が上部中央に鎮座しているが、本来これはないのが標準。つまりオーディオレスデザインありき。DINサイズにこだわるからこういうことになるが、小型のラジオに携帯プレーヤー用のジャックを一つつけておく程度ならこの「狭小コンソール」に収まるだろうし、スマートで今風のスタイルになるだろうに。ハンドルはチルトのみ。運転席には高さ調整なし。しかしそれでもこの狭い中充分快適に過ごせる運転環境にはなっている。ペダル類のオフセットも無く、フットレストこそないが窮屈な印象はない。パワーウインドウは運転席のみワンタッチだが、ルーフ操作時にはスイッチ一つで両側の窓が下がる。室内には物置き場が少なく、ちょっとした手提げカバンさえ置き場に困る。シート後方の壁をもう少し掘るなどしてくれると助かる。運転席からはボンネットを視認できる。




 Aピラーはさすがに太いが黒く塗られフロントガラスへの写り込みもない。サイドミラーはもう少し前方に取り付けたほうが自然。




 リアガラスは横広で実視界はごらんのとおり。



 インテリア・ラゲッジ



 ベージュ色のシートにブラウンのダッシュボード。黒一色から脱却できただけでもマル。シート地はファブリックで、従来型のようなレザー仕様は今のところない(ディーラーOPで革調シートカバーあり)。メーカーオプションで黒一色の内装も選べる。せっかくオプションを用意するならもっとポップな印象のインテリアも提案して欲しい。現状だといかにも年配者に配慮しました、という感じだが、しかし年配の人がユニクロを着こなしているというのはなかなか格好いい。そのようなイメージをもっと打ち出して欲しい。




 限られたスペースでシートの大きさも制限のある中、充分な厚みを持ったクッションと過不足ないサイドサポートを両立し、立派にスポーツシートをやっている。シート前端の高さだけでも調節できたらと思うが、難しい相談なのだろう。クローズ時の居住性は閉塞感も少なく、内張りの形状をうまくやって頭上空間も稼いでいる。オープン時は風が頭頂部を撫でるという感じで、大袈裟な風の巻き込みは、少なくとも80km/h付近までは感じられなかった。

・前席頭上空間/こぶし1つ(クローズ時)




 屋根をクローズしている時は全域を使用できるが、屋根を畳み込んで収納すると真ん中に見える仕切りより後ろ側しか使用できない荷室。格納式ハードトップにこだわるとそうなるが、ソフトトップにしてしまえば畳んでおく場所も取らず、オープン、クローズ問わず広い荷室を確保できると思うのだが、格納式ハードトップがこのクルマのウリだというのだからしようがない。



 エンジン・トランスミッション



 今回からエンジンは3気筒DOHCターボとなる。燃費やトルク特性の面でこちらの方が有利であり、エンジン単体でも30キログラムからの軽量化にもなったという。低速からよく粘り、アイドリング付近でクラッチを繋いでも充分に加速してくれる。マフラーで作られた「音」もなかなか軽快。5段マニュアルのシフトレバーは短く節度のある操作感でスポーティ。しかしエンジンがズボラを許してくれるため頻繁にチェンジする必要がないあたりいかにも現代的。むしろこのクルマの多くはオートマチック(CVT)で乗られるのだろう。CVTでなく、キビキビと走り効率も良いDCTだったりするとなお良いのに。



 足廻り



 強固なフレーム状のモノコックに外板を貼り付けるという構造。剛性にはかなりの自信を持っているようで、16インチタイアもうまく履きこなしている。路面からのショックを上手く逃がせているという側面もあるだろう。イヤな振動や低級音はなく、いたって静か、乗り心地は芯のある優しさ。総じて大人っぽい。ハンドルもしっかりとした手応えがあり、街中を走る分には軽さと相まって人車一体感を味わえる。希望を言うならもうすこしブレーキペダルの踏み応えにしっかり感があるとさらにスポーティ。



 結論

 小さなスポーツカーはキュートな印象があって誰の目にも可愛らしく映る。そんな生まれながらの愛されキャラに磨きがかかり、今度は好みに応じた外板を選べるマルチな才能も手に入れた。スポーツカーだが、このクルマのスポーツとはタイアをすり減らすような激しい走りのスポーツではなく、若々しさ、すがすがしさといった、このクルマと共に在ることで得られる明るい気持ちにこそその本分がある。たればこそ、カラーリングや内装のチョイスがちょっと常識的に過ぎるのが残念という気がする。




 外板のバリエーションを増やすのも結構だが、個人的にはそんなことよりソフトトップを採用して軽量化と荷室確保を実現した仕様が望ましい。持てばきっと愛着の湧くこのクルマのこと、荷物を積み「屋根をオープンにして」長距離ドライブに出かけたくなるのは必至だ。そうなるとこの格納式ハードトップは捨てなければならない。このサイズで格納式ハードトップを実現した技術力は認めるが、実用性から言えば畳んでも場所を取らないソフトトップのほうが有利だ。ぜひ検討してもらいたい。







 10項目採点評価

ポリシー >>> 9
スタイル・インテリア >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 9
NVH >>> 8
ドライバビリティ >>> 9
スペース >>> 6
気配り度 >>> 7
先見性 >>> 8
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 6




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 試乗データ

試乗日:2014年6月20日
試乗車:ダイハツ コペン・ローブ (車輌本体価格:1,819,800円)
型式:DBA-LA400K
エンジン:KF-DET(直列3気筒658ccDOHCターボ)
トランスミッション:3ペダル5段マニュアル
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3395×1475×1280mm
ホイールベース:2230mm
車輌重量:850kg
最小回転半径:4.6m
タイア:165/50R16 75V
JC08モード燃費:22.2km/L
ボディタイプ:2ドアオープン
ボディ色:マタドールレッドパール<R70>
内装色/素材:ベージュ/ファブリック
装着オプション:
     カラーオプション・マタドールレッドパール色(32,400円)
     純正ナビ・オーディオ装着用アップグレードパック(16,200円)
     ナンバーフレームセット(5,746円)
     カーペットマット(17,993円)





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 メーカーサイト

https://copen.jp/





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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。










前田恵祐



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