この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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二代目ラクティスには2011年1月に試乗をしている。そのときには欧州車顔負けのビシッとした走りに驚かされた。好印象の影には富士重工との共同作業があったことは明らか。2014年5月、ラクティスはマイナーチェンジが行われ、1.3リッターエンジンの改良を目玉にブラッシュアップが図られた。今回はその1.3リッター新エンジンと、かつて大きなキャラクターになっていた足廻りは今もって魅力的であるかどうか、こうした点について確かめてきた。
■ エクステリア
外観はライバルであるフィットやノートと類似系。トヨタは大きなシェアを持っており、自社顧客が「あんなものがあったらいいな」と思う場所にタマを送り込まねばならない。このデザインは多分にそうした要素が影響していて、このクルマならでは、という創意はあまりなくてもいい、というもの。
全高は1585mmと立体駐車場サイズを少し上回っているが、トヨタがこのサイズで出していることを逆説的に捉えれば、1550mmの「しばり」は、顧客の側からあまりもたらされなかった、ということなのだと思う。それより、容積確保や切り詰めた設計による製造コスト上昇を抑えるほうが優先だったのだろう。
ホイールは16インチ。
テールライトは、スモールで輪郭の五角形が点灯し、制動灯はその内側の4連LEDが独立して点灯し、面積で制動を知らせる。
■ 視界・扱いやすさ
試乗グレードのハンドルはチルトのみ。上級グレードにはテレスコピック調整も備わる。エアコン操作は同様ダイアル操作のマニュアルで上級グレードはプッシュ式のオートエアコンになる。そのエアコン操作へのアクセスにやや支障するシフトレバーはゲート式。駐車ブレーキは足踏み式で解除は二度踏み。運転席にはラチェット式高さ調整が備わり、背もたれもそれに連動する。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。
ドアミラーの大きさ角度ともほどよく視界への支障は最小。三角窓も有効。Aピラーは日なたに出るとフロントガラスに白く映りこむ。ダッシュボード上面の角度は良く考えられており、映りこみを抑えている。
最終ピラーはさすがに太い。ピラー埋め込みのウインドウも実視界にはあまり有効ではない。
■ インテリア・ラゲッジ
あまり開放感ばかりを演出せず、適度な包まれ感も大事だと考えている居住性。内装色は黒のほかに、上級グレードにブラウン系もあり。
シートサイズは大きめで堅さも適度。シートバックのカーブが腰や背中にフィットする。高さ調整をもっとも下にセットすれば座面の後傾角も得られて体圧をを分散できる。安っぽくないかけ心地。
・前席頭上空間/こぶし2つ+アルファ
シートバック上端がウエストラインにあり、小さく見えてしまうリアシートだが、実際に座ってみると十分なかけ心地。座面の堅さ、角度も適切で、着座位置も前席より一段高く、前を見通せる。
・後席頭上空間/こぶし1つ半
・後席膝前空間/こぶし1つ
ラゲッジスペースはライバルより特に優れた空間というわけでもなさそう。間口が上に向かうにしたがって絞られているのはちょっと残念賞。
■ エンジン・トランスミッション
形式こそマイナー前と同じだが、アトキンソンサイクル化にクールドEGRやVVT-iEの採用、フリクション削減などにより、より高効率にしてスムーズ、静かになったエンジン。とくにトルクが太いわけではないが、どの回転からもフラットに力を発揮し、ストレスのないドライブを可能としている。試乗時は炎天下、エアコンフル稼働での走行になったが、エアコンの負荷もほとんど感じられず、静々と前に出る印象はコンパクトカーの概念を塗り替えるかもしれない。
■ 足廻り
前期モデルでは欧州車を思わせる骨太な印象のハンドリングだったが、そのキャラクターはマイナーチェンジで破棄された。はっきりとしていたセンターはややダルになり、操舵時の反力とインフォメーションも「並」になった。つまり、いつものトヨタ車に戻ったといっていい。ちょっと残念だ。ダンピングの効いたフラットな姿勢となめらかなライドはもしかするとハンドルの手ごたえと引き換えに得た快適性かもしれない。
■ 結論
総じてやや甘口に振られた今回のマイナーチェンジ。欧州風のハンドリングというせっかくの良さが失われたことは残念だ。しかしこのクルマを求める顧客にとってそんなことはどうでもよく、スムーズにストレスなく環境にやさしくドライブできることのほうが重要なのだということは良くわかるし、そうした声や要望に応えることに反対はしない。量産製品とはそのように進化するものだろう。たとえば後席の折りたたみを多少犠牲にしてもバッテリーを積んでハイブリッドにするという手もあったはずだが、このクルマではエンジン単体に手を入れ、効率を改善してきた。他社の様子を見ると、やはりまだまだエンジンで出来る効率化もあるという、トヨタの判断なのだろう。決して気の抜けたマイナーチェンジではないし、要望や時勢に応じた身の振り方という気がする。2014年時点での大衆向け商品として不足のない出来だ。
■ 10項目採点評価
ポリシー >>> 7
スタイル・インテリア >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 8
NVH >>> 8
ドライバビリティ >>> 8
スペース >>> 8
気配り度 >>> 8
先見性 >>> 7
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 7
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■ 試乗データ
試乗日:2014年7月12日
試乗車:トヨタ ラクティス1.3X (車輌本体価格:1,615,091円)
型式:DBA-NSP120-CHXXB(B)
エンジン:1NR-FKE(直列4気筒1329cc)
トランスミッション:Super CVT-i
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3995×1695×1585mm
ホイールベース:2550mm
車輌重量:1090kg
最小回転半径:4.9m
タイア:175/60R16
JC08モード燃費:20.0km/L
ボディタイプ:5ドアステーションワゴン
ボディ色:ホワイトパールクリスタルシャイン<070>(メーカーOP:32,400円)
内装色/素材:ブラック/ファブリック
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■ メーカーサイト
http://toyota.jp/ractis/
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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。
前田恵祐
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