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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#158 一歩一歩着実に


 マツダCX-3 XD Touring 試乗インプレッション (2015.4)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 個性的なものを作るのは難しい。この没個性の国にあって、個性を持った商品を、しかも万人向けに仕立て上げることは、じつは並大抵の感覚ではできないことだ。その難しさを知ればこそ、マツダが「自分には個性があるんだ」と「主張」し続け、その実主張の方が勝ってしまう(実が、必ずしも伴っていない)という現象に立ち至るという事情も理解しないでもない。個性とは衣だけでは成らない。骨の髄まで個性的、独創的でなければそうとは呼べない。



 エクステリア



 他のマツダと同じ顔をしているが、いたずらにデカすぎず手に余さないサイズがいい。上から見た場合の縦横比のバランスもよく、プロポーションがいいのも救い。そこに、昨今のマツダにしてはヤリ過ぎでないプレス加工の演出もほどよく加わって、なかなかモダンでちょっと涼しげなパーソナルカー、という印象。




 タイアハウスと上屋のバランスもよく、キュッと引き締まった、それでいてキュートな印象も与える。新色「セラミックメタリック」はいうなればライトグレイのメタリックだが、ヘタすると作業着の色になってしまいそうなところ、この車のデザイン上の抑揚をうまく表現してコントラストを生かしている。




 もう見飽きた147テール。もっとほかのアイデアはないものか。



 運転環境



 ハンドルは手動のチルト&テレスコピック調整。エアコンは一撃操作のダイアル。ナビは手元のコマンダーで操作。計器盤はタコメーター中心にデジタルのスピードメーター、さらにヘッドアップディスプレイも備える。視認性良好。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。マツダはいつまで経っても全席ワンタッチにはならない。駐車ブレーキはコンソールのレバー。ATのシーケンシャル操作は押してダウン。運転席シートリフターはラチェット式でヒップポイントの調整のみ。かろうじてボンネットフードを視認できる。




 Aピラーは白くてそれなりの太さだが映り込みは控えめ。また、上面ののっぺりしたダッシュボードもまた、日なたに出ても映り込みは気にならない。マツダ車の中で、たまたまうまくいっているだけなのか、このクルマの開発者がこだわっているのかは不明。サイドミラーがやや後ろ寄りなのが少々気になる。




 リアウインドウはじめ、各ウインドウガラスは小さめだが、内装やピラーがそれを妨げないように作ってあることがわかる。



 インテリア・ラゲッジ



 基本的にデミオと共通のデザインコンセプトをもつダッシュボード。シンプルでいいが、といって目新しいわけでもない。縫い目が入っていれば即それが上等、という考え方もどこかありきたりだ。カラーリングもこの黒系と本革の白とのコンビがあるだけ。エンジ色のアクセントは悪くないが、もっと大胆なカラーリングにもチャレンジしてもらいたい。




 各マツダ車シートには出来にバラツキがあると書いたことがあるが、このクルマのシートはそれらの中でも出来は最良の部類。突っ張っているわりに沈み込む、いつものマツダのシートとは異なり、しっかり支えて欲しい腰や尻も不満はないし、シート全体の着座感がアヤフヤでなく統一感があって、シートのことを忘れていられる、という感じ。

・前席頭上空間/こぶし1つ半




 後席シートは前席同様着座感が良くサイズも十分。それでいて、外観から想像するよりスペースに余裕があり、居心地、眺めともに良好。背もたれとヘッドレストの位置関係、サイズも個人的には不満なし。

・後席頭上空間/手のひら1枚
・後席膝前空間/こぶし1つ




 このクルマはあくまでも都市に住む独身者をターゲットとしたパーソナルカー。だからフル乗車に荷物満載の長距離ドライブはあまりシーンとしては想定していないと思われるが、荷室はこのとおりの余裕。左右を深堀りできるとさらにいいかも。



 エンジン・トランスミッション



 マツダのこのディーゼルエンジンに6段オートマという組み合わせは、シフトがややビジーかなという気もするが、もはやテッパン。マニュアルが選択できるのはマニュアル派の筆者にとっても喜ばしいが、しかしこのエンジンはマニュアルよりオートマ。低速から溢れんばかりのトルクと、高回転でのキレの良さ、ダイレクトで素早くスムーズなシフト、どれを取ってもすばらしい。唯一、音さえ容認できれば・・・情熱的でも上品でもない、トラックと同じ音がします。




 適宜エアコンを作動させながら、高速5割、一般道5割のパターンで17.8Km/L。街乗りが多いとはっきりと、たとえばハイブリッドより分が悪いし、その意味で週末などに高速で足を伸ばす人向けとはいえる。あるいは郊外、地方在住の人。




 足廻り



 やや堅めの足で、ハンドルはセンターのはっきりしたシャープな切れ味・・・という基本特性も、あるいは、硬いだけであんまり綺麗に動いてはいないバネ・ダンパー、加えて音振動の処理に関してもかなりの比率でブッシュに依存している、というあたりもデミオなどと同じ。これであと一歩や二歩、ブッシュをソリッドに、バネ・ダンパーを綺麗にストロークさせられればワーゲンの領域なのに、惜しい。重心位置とロールセンター、またヒップポイントとの関係がうまくいっていて、過剰にロールを感じさせないし、クルマの挙動そのものはソリッドな印象。




 結論

 たとえばデミオみたいな実用車でヘタに”カッコつけ”をやられるとウザったくて暑苦しいが、こういう、そもそもがカッコつけグルマでそれをやる分にはいっこうにかまわないし、むしろ好ましいものに仕上がっている。そしてやはり「好ましい」と思わせる要因はそれだけではなくて、たとえば運転環境やシートの作り、室内空間や荷室の間取りなど、細部の仕上げや煮詰めが丁寧に行われているという其々の印象が、この「好ましい」に結びついている。根っからの個性派でこそないものの・・・






・・・しかし、お金に余裕が有るならデミオよりも断然こちらのほうがおすすめできるし、アクセラよりこちらだろう。CX-5はもはやデカすぎて旧型車といいたくなってしまう。さらに言うなら、いつまでもUSカブレのハリアーなんかよりずっとマシな、今風の選択になるはずだ。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 8
デザイン >>> 9
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 8
走りの調律度 >>> 7
運転環境と室内空間 >>> 8
ヒトへの優しさ度 >>> 8
卓見度 >>> 8
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 8





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 試乗データ

試乗日:2015年4月16日
試乗車:マツダCX-3 XD Touring
車輌本体価格:2,592,000円(OP含まず)
型式:LDA-DK5FW
エンジン:1498cc直列4気筒DOHC直噴ターボディーゼル(S5-DPTS型)
トランスミッション:トルコン式6段オートマチック
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4275×1765×1550mm
ホイールベース:2570mm
車輌重量:1260kg
最小回転半径:5.3m
タイア:前後215/50R18 92V(TOYOプロクセスR40)
JC08モード燃費:23.0km/L
燃料タンク容量:48L(軽油)
ボディタイプ:5ドアハッチバックSUV
ボディ色:セラミックメタリック
内装色/素材:合成皮革・ブラック+クロス・ダークグレー
装着されていたオプション:
     セーフティクルーズパッケージ
      ・車線逸脱警報システム(LDWS)
      ・マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)
      ・ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC)
      ・スマート・ブレーキ・サポート(SBS)
     CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)
     Boseサウンドシステム+7スピーカー






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 メーカーサイト

http://www.mazda.co.jp/cars/cx-3/






協力店/マツダオートザム旭

http://www.mazda-autozamasahi.com/




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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。









前田恵祐
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