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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#003 ランチスタのためのランチア

ランチア・デルタ 3代目 試乗インプレッション(2008.11試乗、2009.6再上梓)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 VWゴルフIのライバルとして同じジウジアーロがデザインした2ボックスカーが初代ランチア・デルタ。日本ではラリーマシン”インテグラーレ”で認識されていることも多いが本来はごく一般的な実用車でありファミリーカー。2代目も同様のコンセプトで90年代に発売されたが日本へはごく少量しか入ってこなかった。このほど、”インテグラーレ”を世界一売ったディーラー「ガレーヂ伊太利屋」の手で最新の3代目の輸入が開始された。



 概観



 幅が1.8メートルを辛うじて切る幅広だがそれ以外はミドルサイズの、日本国内ではプレミオあたりの大きさ。かつての機能美を追求した合理的な姿とは異なり、曲線、面で構成された優美な雰囲気を持ち味とする。細かい意匠にどこか日本車の面影も見て取れるが大胆なルーフにふくよかなテールとそのガラス面の美しさはさすが。どちらかというとパーソナルカー然としており、ランチア・ブランドらしくエレガントでもある。しかしかつてのランチアを知る者としては、もう少し抑制という情感を効かせてほしかった。目立たない、でも美しい、という知的な要素も”高級”には必要。





インテリア

 落ち着いた色合いと選ばれた素材とその組み合わせが絶妙。カバンや服を売っているイタリアの高級ブランドと並び称してもいいくらい”高級ブランド”然としている。しかし問題はこの調度に見合う、自らのファッション、着こなしができるかということ。自信のある人向き。クルマとしてもファッションとしてもハイレベルな雰囲気。




 横置きFFシャシで幅もあり室内空間はたっぷりしているが意外に天井が低い。前席ではまだしも、後席では天井に頭髪が触れるしシートのアンコも心持ち薄い気がする。




 浅暗く光をとおすガラスルーフのおかげで室内の雰囲気はおちついており、ますますパーソナルな(自分以外の他人を運ぶという目的の度合いが少なめという意味で)空間。かえすがえすも充分に広いが座席数や積載量を標榜するクルマとは対極にあると言っていい。クルマは自分のものであり、自己を表現するアイテムであると思える人に。



動力性能

 1.4リッター/150馬力のターボエンジンはこの車体に充分な力をもっている。しかしトランスミッションは6段マニュアルであり、そのギアレシオの設定は”ランチア式”。つまり、中低速よりも高速域にあわせたものと思われ、街中では明らかに各ギアのステップが開いているし、ましてやレシオも高めでかったるいと思うこともありそうだ。しかしそれがランチア。街中ではゆっくりと、エレガントに立ち振る舞うべし、ということなのであり、またそう立ち振る舞うには相応のスキルが必要。豪快にコーナーを駆け抜けるインテグラーレを想像するとがっかりしますよ。



足回り

 基本的にはフラットで快適。騒音や振動もよく抑えてあり、やはり高級車だと思わせる。ランチアの足で素晴らしいのは姿勢変化を許すものの過渡特性がすぐれていることで、ひとことでいうとリニアであるし、形容するなら非常に美しくゆったりと、それでいて軽やかに足が伸び縮みするのがわかる。所作、立ち振る舞いがエレガントなのである。この表現は、例えばテージスにおいても同じであるし、イプシロンやかつてのテーマ、デドラも同様。これのためにランチアを買うようなものだと僕は思う。依然としてすばらしい。




 ただし、このクルマに関して言うことがあるとするならタイア(銘柄はグッドイヤー)の踏面がやや硬めだったことと、ステアリングからのフィードバックがランチアにしてはアマめなこと、そしてステアリングギアレシオももう少しクイックなほうがそれらしい、ということである。パワーステアリングは電動でそれ自体の印象に不自然なところはないが、快適でいて舵の効きが正確なのも本来のランチアなのである。



まとめ

 ランチアはイタリアの中産階級を思わせるたたずまいや生活観をもっている、イタリアでもっとも保守的なブランドといえる。そして3代目デルタもその路線上にあるといっていい。多少なりとも提携先から供給を受けるエンジニアリングの影響や、昨今の流行りなどに左右されていたりもするが、少なくとも90年代以降ランチアに長く付き合った自分にとって、このクルマはおおいにランチアだった。


 3代目デルタはサイズも適当で、小さな(充分大きいが)高級車である。その立ち位置はかつてのテーマやデドラ、消滅して久しかったリブラの位置にあり、高級とは大きいことや仰々しいことではなく、より内面的なものであると信ずるランチスタにとってまたとない一台と言えそうだ。その価格はこの種の少量輸入車としてバーゲンプライスですらあるのだから。



http://www.garage-italya.com/index.html


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。











前田恵祐


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