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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#008 時を経て再登場

フィアット500 1.2ラウンジ 試乗インプレッション(2008.2試乗、2009.7再上梓)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 いにしえのフィアット500は言わずと知れたイタリアの国民車。限られた資材の中からいかに無駄なく、市民の生活に役立つものをと突き詰めていった結果あの形や構成になっていった。キュートなルックスも実は鉄にはカーブを持たせたほうが強度が出るから丸いフォルムになったのであり、必ずしも見た目だけを追い求めた結果ではない。



 概観



 そう考えると、今、この車がこの形をしている理由は単純に祖先へのオマージュ以上のものではない。今の技術でいにしえのフォルムを再現し、消化させているデザイン力は認めるが、このカタチに必然性がないという以上、”チンクェチェント”を超える車にはなりえないと思う。21世紀には21世紀に相応しい国民車のあり方が、もっと別の形で提案できたはずだ。




 とはいっても、確かに可愛いし、実物を見るとなかなか癒されるのである。むさ苦しい男より若い女性が乗っていると似合う。ありていのブランドより自分なりの個性を見出せる人に向く。街中で見かけると明らかに景色が変わる。いつもの麻布界隈もローマかミラノに思えてくるから不思議だ(?)



インテリア



 ここは安全性などの問題から、祖先のような鉄板むき出しのシンプルさというわけにはいかず、現代のデザインの中に祖先のモチーフをちりばめているといった印象。なかなかうまく取り入れていて、厭味になっていないのがまたイタリアのデザインセンス。





 シートは比較的硬めで、サイズは小さいが不満はない。フランスの小型車のように小さいのに大型車のようなすわり心地ということはないが、良く観察するとこれはこれでうまくショックを吸収してフラットな乗り心地に貢献しているし、不快な振動も伝えてこないから長時間ドライブでも充分に対応できるだろう。ヨーロッパ車らしい作りだ。




 スペースは明らかに前席優先の2+2。後席は座高の高めな筆者だと天井に頭が触れる。足元はまあまあ不足はないのだが。試乗車には大型ガラスルーフが備わっており開放感が高かった。昔風にキャンバスで開け閉めできればいいのに、と思っていたら、最近追加になった。トランクは案外広くて、2泊3日程度くらいの荷物にならこと足りるだろう。




 ラゲッジはごらんのとおり。


動力性能



 試乗車は1.2リッター8バルブ+デュアロジックという構成。パンダなどでもおなじみのもので最大出力は70馬力にも満たない代物だが、なんと言ってもブンブンと気持ちよく回り活発に立ち上がるレスポンスが魅力だ。ボトムエンドのトルクも充分で柔軟性にも長けているが、ここはやはり3ペダルで行きたいところだ。それには並行輸入を選ぶしかないのが残念である。




 デュアロジックと名づけられたロボタイズドMTの完成度は年を経るごとに改善されており、見事なダブルクラッチによるシフトダウンだけでなく、シフトアップのタイミングや息の合わせ方も上手になった。後発のドイツ勢には正直及ばないが、あちらとは部品構成が大きく異なるし、コストもこちらのほうが軽いから比べるのは酷というものだ。



足回り

 はっきり言って車体もホイールベースも短いし、だからピッチングも目立つ。小さいからといって落ち着いた身のこなしでよく出来ていますね、というありがちな評価は出来ないが、むしろ最近では珍しいくらい小さいことを利として軽やかな身のこなしを身上とするクルマだ。




 イタリア車の足に共通して言えるのは、限界の高さやフラットな乗り心地といった完成度の高さより、例えば入力に対する反応がナチュラルで人間の言語近い感覚で応答してくれるところだ。ステアリングを切る、タイア踏面が摩擦を起しノーズが向きを変える、しなやかなバネがじわりとしなって重力や遠心力を受け止めていることを自然に理解させながらコーナーを回っていく。


 理屈や数値だけでは語ったり評価しきれないのがイタリア車の魅力であり、そのことはもしかすると人間と同じなのではないかな、と思ったりもする。イタリア車は人懐っこいと言われる所以はそんなところにもありそうだ。



まとめ

 これで安ければ言うことは無いのに、というのが運転席から降りた第一声だった。祖先へのオマージュでデザインされたならもう一歩踏み込む要素が何かほしかった。それは徹底されたパッケージングかもしれないし、技術的な先進性(現代における)かもしれなかった。悪く言えば、パンダのシャシの上に祖先に似た車体を乗せたに過ぎないクルマである。仮に、技術やコストの制約でそこまで踏み込めなかったのなら、例えばプントやパンダよりずっと安く出すとか、要するに「頑張った」証が欲しいのである。


 当時博士級の設計者が英知を絞って生み出した50年代のチンクェチェントを心から敬うなら、彼の「頑張り」にもっと思いを致らすべきではなかったか。




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。









前田恵祐


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