マツダ・RX-8 タイプRS 試乗インプレッション(2009.7)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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RX-8はそろそろモデル末期である。昨年大掛かりな改良が施され飛躍的に完成度を高めたと聞いた。たしかにいくつかあった気になる点。それらがいかに改善されているかを確かめてきた。
■ 概観
これは完全に好みの領域だが、筆者にとってこのデザインは、好意的に取って「おおいに個性的」。完全4人乗りのリアルスポーツとして新たに開拓した分野だけに手本があったわけではないからデザインは難しかったと想像できる。しかしその個性を充分に表現し、他の類似系としてお茶を濁していないところに好感が持てる。
灯火類のデザインだけはもうすこし大人向きのほうがいいんではないかな。このクルマの顧客はやはり一定の年齢に達した大人だろう。
■ インテリア
デザインは少しずつおとなしくされ、整理整頓された印象を受ける。純正ナビはポップアップからインダッシュになった(試乗車は未装着)。プラスチックの質感も少しアップしているようで、表面処理も落ち着いたように見受けられる。視界良好、運転中にボンネットやフェンダーの峰を視認できることで狭い道でも幅の大きさをカバーする。
前席レカロとなるのはタイプRS。これが最高で、フィット感が高くコーナーではがっしりサポートしてくれる心強さを持ちながら普段使いでも快適性が高く疲れさせない。やはりレカロは一級品だ。
外見にはよらず、収まってしまえば実に快適な後席。そらたしかに視界は悪いがむしろ包まれる安堵感、それでいて絶妙にスペースをえぐって身体を圧迫させない工夫が凝らされ、東京から御殿場くらいの距離(100キロ/1時間程度)なら問題なさそう。足元も、前席で筆者がポジション取りをしたのちに後席に収まっても充分以上。
トランクルーム。
■ 動力性能
6段マニュアルは短いストロークで軽快に、短時間に操作できる。クロスしたギアレシオで短く区切りながらエンジンのおいしいところを存分に生かしてスポーティに行く。そのときのサウンドもロータリーならではでなかなか痛快。絶対的に速くはないが、楽しい。
それでいて日常的なシーンでも充分以上の柔軟性を持っていて、トロトロ走りでもまったくマゴつくことなくすんなりとこなしてくれる。アイドリングでクラッチを繋いでもこの人は文句を言わない。ここは改良されて出力特性を全域重視に振ったおかげだろう。
■ 足回り
ビルシュタイン製ダンパーがおごられた足は確かに硬めだが、凹凸はきちんと吸収して最小限のフラット感を持ち合わせている。ダンパーの動作精度が高いというビルシュへの評価は確かなようだ。
自然な感触となったパワーステアリングもまたマイナーチェンジにおける改良点で、そのレスポンスもナチュラル。充分な手ごたえと路面からの情報をフィードバックしながら質の高い走りをつかさどる。身のこなしは軽く、ヒラリヒラリと山坂道を行く。恐らく、だが、限界域でもコントローラブルな性格なんではないかな。
重量物を車両の中心に集め、車体自体の慣性マスをできるだけ削減している。だから動きが軽く安定してもいる。そして同時に剛性が高くダイレクトな印象に終始する。軽量化と剛性確保は相反する課題であり、簡単なことではない。しかしこのクルマに乗って見ると、ホイールからブレーキ、サスペンション、さらには車体側に至るまで、かなり徹底して軽量化作業が行われているとわかる。それはドライバーの指先の神経が路面に通ずるかのような研ぎ澄まされた運転感覚が無言のうちに示している。まるでポルシェのようにリファインされていると感じた。
■ まとめ
たしかに後期型のRX-8はとても改善されていた。気になっていたところはすべて払拭され、持ち味を伸ばし、さらにスポーツカーとしての資質を高めた。ひとつの素材を丁寧に磨きをかけ、手塩にかけて仕上げていくというマツダという会社の真摯な姿勢を感じ取れることは間違いない。こうしたモノ作りとは、高い目標をもち、クルマを熟知した人たちでなければできないことだ。

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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。
前田恵祐
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