レクサス IS F 試乗インプレッション(2008試乗、2009再上梓)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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ありていだが「羊の皮をかぶった狼」である。ライバルはGTRと目されることも多かったが実際にこのクルマが向かって行く先はもっと別の方向だと思う。
■ 概観
レクサスISの基本フォルムに必要なだけの肉付け、それはワイドタイアを収めるためのフェンダーであったり、勇ましいV8、5リッターを収めるためのボンネットであったり、またエアアウトレットなどのたぐいを付加しながらも元来のエレガントさを保っている。
流鏑馬をイメージしたラインとカタログに書かれていたが、それの再現力が存分に発揮されているかどうかはわからない。流鏑馬のなにをリスペクトしているのか、何処に魅力を感じているのかなど、もうすこし作る側がはっきりさせておくべきことがあると思う。
四本出しテール。
■ インテリア
本来木目の部分がカーボン柄になっていたり、シートがバケット形状になっていたり、「F」のロゴが控えめに刺繍されていたり、というベースからの変更点はあるが、基本的にはここもISのイメージを踏襲。
後席は二名がけだが、ムーンルーフ付だと頭髪が天井に触れる。
「Fマーク」が随所に。
■ エンジン/トランスミッション
レクサスLSのV8を基本に排気量を上げ各部を相応にモディファイしたエンジンのレスポンスは鋭く、吹け上がりも素早い。排気音もそれらしく設えてあり、これはちょっとマニュアルで乗ったら楽しそうだなと思った。AMGのV8、6.2リッターを思い出した。
それを8段にも細かく区切ったオートマチックで乗るわけだが、これにはやや問題があって、1つのギアが受け持てるパートが狭くなってしまうから、このエンジンの伸びやかで息の長い加速を満喫しようと思うとすぐ上のギアに入ってしまう。またせっかくのパドルシフトも、加速やエンジンブレーキを得ようとすると、欲しい加減速を得るのに2度や3度操作せねばならず、これも煩わしい。
8速オートマチックはスムースに効率よく走らせることが目的であって、マニュアル操作でスポーティに走るには不向きと考えたほうがよさそうだ。6速あれば充分と思える。ただし、超高速域ではまた話しは別なのだろうけれど。
■ 足回り
出たばかりの頃の試乗の再録だから、今新車で出てくる個体は改善されているやも知れないが、はっきりと硬い。かなり強い突き上げに見舞われる。硬いだけならいいが、サスペンションアームやその取り付け部の剛性不足をはっきり意識させられ、つまり「しなってほしくない部分」がしなる。これだけでドライバーにとっての信頼感はかなり薄らぐ。そんなわけだからダンパーも本来の性能を発揮できているのかいないのか、わからない。車体は意外としっかりしていて、聞けばノーマルのISから大きくモディファイされてはいないらしい。だから意外なのだ。
ハンドルももう少しクイックで、ダイレクトに路面の感覚を伝えて欲しい。そしてパワーステアリングは軽め。ノーマルのISとあまり変わらない印象だ。
■ まとめ
考え方としてはメルセデスのAMG・C63のライバルということなのだと思う。実用性そのまま、背広で冠婚葬祭にも乗り付けられ、むろん仕事にもOK。魅力的なスポーツサルーンなのだが。
細かい部分をもっと詰めていけばかなりよくなると思う。また、足はもうすこししなやかなほうがこのクルマの購買層には喜ばれるのではないだろうか。仮に、その上で走りをさらに極めたいなら「FSWパッケージ」を用意すればいいのだと思う。
こうしたクルマは贅沢で、無類のパワーを日常に携行しながらたやすく非日常をも手に出来るというわがままを許してくれる。既存の材料をうまく仕立て直して合理的に超高性能車を成立させた好例だ。GTRはどうにも根が詰まりすぎて息苦しいよ、というクルマ好きの大人にとって有力な候補に上がる一台だろう。
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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。
前田恵祐
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