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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#022 個性的なファミリーカー

三菱・ギャラン・フォルティス/スポーツバック 試乗インプレッション(2009.8)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 ギャラン・フォルティスはモデル統廃合によりランエボと基本部分は同じクルマである。あのランエボのベースとなったクルマ、と考えると、おとなしい乗用車でありながらその”片鱗”が垣間見られるのだろうか。どんな特徴があるのかを楽しみに試乗した。



 概観

 逆スラントしたアグレッシブなフロントエンドが目を引く。以前からギャランのアイデンティティとしてきたモチーフである。他の同様の銘柄が形を変え名前さえも変わり、特徴を平準化する傾向にあるなかで、三菱、ギャラン、ここにあり、という存在感を持っている。




 個性的なリアをもつスポーツバックは5ドアハッチバック。セダンを採るかこちらを採るかはスタイルの好みでいいはずだ。ホームセンターで買った大きく嵩張る荷物を積み込みたいなら、どちらかといえば開口部の広いスポーツバックのほうが適するだろう。




 ルーフスポイラーは取ってつけたよう。最初からこうしたものがなくても済むようなデザインにしてほしい。特徴と個性があり、強い主張でなくともしっかりと自分をもっている立ち姿はなかなかいい。



インテリア

 広さは充分。横、天地方向とも余裕があり、後席も広大ではないがこのクラスのクルマとして十二分のスペースがあるといっていいだろう。




 インテリアカラーは、スポーツバックの場合黒一色となるがこれはやや寂しい。概観の個性に見合うような個性をインテリアデザインやカラーリングにも採用してほしかった。




 他のモデルと共通化されているステアリングホイールのリムに巻かれたレザーの手触りがいい。リム自体も太すぎることがなく握る力を加減しやすい。シートは平凡だが気になるところもなく疲労を軽減してくれるだろう。ダッシュボードの操作性、視認性を含め、全ての印象がすっきりとしており、ストレスの少ない運転環境が確保されていると思う。丁寧な仕上げは三菱の特徴で、作り手の良心を感じる。





エンジン/トランスミッション

◆2リッターNA+CVT
 2リッター4気筒エンジンは充分に静かでなめらか。CVTも厭味がなくいたずらに回転を上げるような事もなくダイレクトでこれもエンジンによく合っている。注意深く調整されここでもストレスを感じることは少ないと想像できる。気持ちがワクワクするとかそうした傾向ではない。しかし、丁寧に煮詰められているため完成度が高い。目立たないがこれも特徴の一つだ。




 SSTのシフトレバー。操作感は短いストロークに加え節度感もあり、スポーティ。芸が細かい。


◆2リッターターボ+ツインクラッチSST
 街中をおとなしく走る限り特別なパフォーマンスを持っていると意識させることはないだろう。ツインクラッチSSTのマナーもよく躾けられており殆んどトルコンATと同じ勝手でスイスイと行く。しかし一度でもマニュアルシフトをしたりアクセルと深く踏めばシフトのレスポンス素早く240馬力を持つエンジンが目を覚ます。この二面性が大人のスポーツという感じ。どの領域からも力強く、今時(!)50:50の前後トルク配分をもつ4WDの確かなトラクションと接地感を肌で感じながらグイグイと前へ出る。かつてのギャランVR4を知っている人には「そうそう、これこれ」の瞬間。三菱、ギャランのDNAを感じるひと時だ。こうしたことは大事にしていってほしい。





足回り

 基本的には注意深く調整され、丁寧に煮詰められている、という他の項目に通じる味なのだが、唯一、NAモデルで18インチタイアを履くと靴の重さを意識させられる。ノーマルの16インチになるとマイルドな面がより強調されて統一性が高まるはずだ。




 ラリーアートはやや硬められており、その印象を一言で言うなら若干筋トレに励んだ結果足腰が強くなったという感じだろうか。しかしそこはラリーカーの血統、乾いたアスファルトだけを想定したものではなく、できるだけ多くの場面でより良いパフォーマンスを発揮できるようにとしつらえてあるようだ。強靭だが凹凸も吸収するしだからといって今路面とタイアの間で何が起こっているのか、の、情報伝達も欠かさない。上下動はあるが角は丸まっている。姿勢変化もこの種のモデルとしては許している方で荷重移動も運転技術の一要素と考えられている。



まとめ

 ノーマルモデルは飛びぬけた特長はないが丁寧に作り設えてあり、地味だが完成度が高い。スタイルに独自性がありトヨタや日産にはない「何か」を求めるユーザーにとって有力な候補の一台になるはずだ。スポーツバックは機敏な印象もありこのクラスでは毛色が変わっており個性的なクルマを求める人に向く。


 ラリーアートはその名の通り、かつてのギャランVR4あたりをイメージさせる、ハイパフォーマンスと日常性を高いレベルで両立し、ツインクラッチSSTという新しい技術も完成度が高くこの面にも特徴がある。また価格にも大きな競争力があるはずだ。


 前者は大人が買うファミリーカーとして、後者は大人が買うスポーティカーとして、ともに程好い完成度、絶妙な立ち位置にあると思う。総じて手ぬるい部分が見受けられず、かえすがえすも「丁寧に作ってあるな」と感じさせられる。それは内外装もそうだし走り味や静粛性、乗り心地に到るまで、全域に行き渡っている。あまりクルマ好きでなくても、あるいはクルマ好きが買ってもそれぞれに満足できるクルマに仕上がっている。



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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