この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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初めて乗ったのはすでに3年以上前。プラットフォームを一新したアルファロメオとして注目されていたが、以前からのイタリア車を愛好する者にとってはソツなく洗練された仕上がりにフクザツな気持ちになった。
■ 概観
ジウジアーロとアルファロメオの共同作業とされているデザイン。力強さを印象付けるフォルムにイタリア車らしい繊細な意匠も欠かさない。
サイズ:4,690mm×1,830mm×1,430mm (全長×全幅×全高)
手ごろなサイズだった156から一回り半大きくなっている。全長は5ナンバー枠一杯、全幅は1.8メートル越え。BMW3シリーズも同じように大型化した時期で、それは主として衝突安全性に充当されていると思っていい。後述する室内の広さが劇的には広くなっていないことでもわかる。
■ インテリア
ボディサイズの拡大に対して室内スペースは、少しは広くなっているかもしれないが劇的には広くなっていない。ドアを開けるとサイドシルやピラー、ドアパネルの厚みがわかる。つまりそういうことのために使われたサイズ拡大分だということ。
まだ養生がほどこされているワケは、発売前だったからです(笑)
横方向は良いとしても、例えばフロントガラスが後傾していてダッシュボードの奥行きが深い。また、エンジンルームもあまり効率的に省スペース化されていないから、ダッシュボードの奥行きがそのまま室内スペースを食っているとわかる。よって前席はまだしも、後席の足元は明らかに狭い。感覚として156と同じくらい、と申し上げておこう。頭上空間も余裕たっぷりとは言いがたい。
厚みのあるドア
インテリアセンスはさすがにイタリア車だからぬかりはなく、カラーもいいし、例のフラウ革も選べ、これの素材感がまた格別。フィニッシュも今までと比べたら格段によくなって、まるでドイツ車、さしずめBMWかアウディのようだ。
やはり、広々ではない後席。
■ エンジン/トランスミッション
2.2リッターエンジンはプラットフォーム同様GM系(オペル)のものをベースとしていて、例の悪名高いタイミングベルトとも決別。いまどき諸元表にカム駆動方式など書かないのが普通だが、このクルマは「チェーン」と誇らしげに書かれている(そう見える)。
いつもはジェントル時々アツいエンジン。
それはともかく、このエンジンはとても静かで振動が少ない。上の方まで淀みなく回るが、かつてのようにドラマチックな盛り上がりはなくやや控えめで力の出方もフラット。「よく出来た普通のエンジン」という印象である。それが悪いといいたいのではなく、こうした基本的なところが良いエンジンは飽きないし、人を疲れさせない。ちょっとBMWの6気筒を思わせる。洗練され大人になったという印象。156オーナーだった人たちも歳をとっているはずだから丁度いい進化かもしれない。
傾斜するコンソール形状から、シフト操作時に指先がエアコンパネルに触れることもある。
初期の6段マニュアル(3ペダル)に乗ることが出来たわけだが、以前ならこだわってマニュアルを漕ぎたいと思わせたアルファも、これなら普通にトルコンATとの相性もいいだろうと想像させた。実際のところ2.2リッター4気筒で選択できる2ペダルは例のロボタイズドMTになる。ちなみに6段マニュアル車のシフトタッチは正確で剛性感と節度感も充分でがたつきも少ない。ここにも以前の面影は見られないが、モノの良さを感じられるはずだ。
■ 足回り
ドイツ系のプラットフォームを得た恩恵か、剛性感があり、例えば足回りの稼動部分がしっかりと支持され設計どおりに動作していると感じられる。この信頼感は一般的なイタリア車として史上初かもしれない。ステアリングも手ごたえがしっかりとしており、ドライバーの操作に対するクルマのリアクションも正確。タイアからのインフォメーションも豊富。
しかし足の伸び縮みは比較的許すほうで、そこがドイツ系との違いだし、イタリアらしい味付けだ。曲がるときにはしなやかさを感じられ、ダンピングも効いている。同時に伸縮を拒まないが故の路面への素直な追従、捕捉性に優れている様子が今までのアルファの面影かもしれない。少しだけ重力や遠心力を受け容れながら綺麗に曲がっていく。その様子はなかなか上品で、同時にスポーティ。
音や振動も、後付け的な処理ではなく根源的に発生させていないタイプという印象。静かだし充分に滑らかで、それは高級車のレベルにある。かつてのアルファ164やランチア・テーマを思い出した。大きさや立ち位置、身なりからいっても、159はちょうど彼らの生まれ変わりかもしれない。
■ まとめ
最初はこの変化振りについていけていない自分だったが、時間がたつにつれて156の後継車というより、さらに上級クラスを狙ったミドルサルーンとして認識しつつある。そう考えればすべてが自然なのだ。
しかし、デザインや内装、走りにおいては絶妙に”アルファ”を感じさせるところがあって、仕立てや味付けの巧みさを感じる。基本的に洗練されたサルーンでいながらサブリミナル的に”らしさ”をチラ見せする加減がまた大人の巧さであり、このクルマのターゲットとなる層の感覚にも合致しているように思う。
イタメシはウマい。それは素材の良さというより作り手のセンスの良さが大きいと筆者は思っている。このクルマにもそれは当てはまっていて、いうなれば良く出来た豆腐ハンバーグのようなものだと思う。イタリアに豆腐ハンバーグがあるのかどうかは知らないが、イタリア人が作れば豆腐ハンバーグもこうなるのか、或いはこうなるんだろうな、という感じの出来。
でもハンバーグは脂っこいからいいんじゃないか、って?そりゃ言いっこなしである。