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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#070 このクルマでなければ、というものが無い

トヨタ ヴィッツ 1.3F SMART STOPパッケージ 試乗インプレッション(2011.4)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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エクステリア



 第一印象として保守的だなと個人的には感じた。特別なことはやっていないし、ましてやどこかでみたことのあるディテールも散見される。




 写真で見るとシェイプされているようなシャープさを感じたが、実物は今までのように丸っこい雰囲気も残している。試乗車はディーラーオプションとなるモデリスタブランドのパーツを装着していた。




 リア。どこかで見たなぁ。



視界・扱いやすさ

 ヴィッツも全長で約3.9メートル、幅で5ナンバーギリギリの約1.7メートル。様々な要求があってこのサイズなのだろう。初代ヴィッツに慣れているとずいぶん立派になったなと思う。




 操作系はいたってシンプル。あるべきところにあるべきものがあり、きわめて簡素にまとめられている。ダッシュボードの”デザイン”、あるいはドア側まで回り込んでいる白っぽい着色部品の良し悪し、好みは判断の分かれるところだろう。個人的にはもっと質素にいきたいところだ。



インテリア・ラゲッジ



 前席。これはヘッドレスト一体型のハイバック仕様。これはこれで後頭部まで途切れなくシートバックがあるという安心感がある。ヘッドレストを別体とするとその分コストがかかっているから後者のほうが”高級”と思われがちだが、その良さはそれぞれにある。かけ心地は柔らかくふんわりしている。この柔らかさ、日産に始まり、トヨタも採用してきた。しかし、後述するが、同時期に出てきたラクティスとはおおきくテイストが異なるのが面白い。




 後席へッドレストはあいかわらず2席分でセンターのシートベルトは2点式。広さはこれで充分、シートサイズの確保にも妥協は少ないと見える。




 ラゲッジはご覧のとおり。6:4分割可倒。



エンジン・トランスミッション

 個人的に馴染めなかったCVTへの違和感はもはや払拭された。ダイレクトであることとスムーズさの両立。いまやいたずらに回転だけが上昇していくこともない。また、そのように運転することも重要。アクセルを一定に保てばクルマの側が一番都合のいい回転数やギア比(プーリー比)に調整して低回転でエコドライブが出来る。しかもこれで意外に素早くスピードに乗る。現代のクルマの乗り方とはこうというものだろう。もちろんいざと言うときに機敏になれないというわけではない。




 アイドリングストップ機能については、他社のものと比べて劣ったところはなく、良し悪しをいうべき点は見当たらない。痛痒なくストップ&ゴーが可能であることは言うに及ばない。またストップ中に任意でエンジンをかけたい場合はブレーキペダルの踏力を少し弱めればいい、という点も他と同じ。ただ、ごく低速時に、例えば縦列駐車などを想定してみると、ややストップの判断が過敏な気はしないでもない。もうすこし悠長に様子を見てからエンジンを止めたほうがわずらわしさは減る。これから拡大していく装置だから試行錯誤はあると思うが。


足廻り



 ラクティスの走りはまるでドイツ車のようにがっしりとした手応えを遣したものだ。今までのトヨタのそれとは大きく異なり、骨のある、そして走りを積極的に楽しめるものになっていた。ヴィッツはそこへいくとやや甘口方向。アシは踏ん張るというより路面の凹凸を吸収することをよしとするタイプ。ラクティスがドイツ車を連想させるならこちらはフランス車か。柔らかいのにガタつきがなく、骨っぽい。関節となる部分がしっかりジョイントされ、アームやブッシュ、車体の剛性もしっかりととられているようで、これはラクティスとの共通点。味付けは違うがクルマ作りの方向性を、やはりトヨタは大きく変えてきたなと感じさせる一面だ。



結論

 クルマという商品にどれだけお金をかければいいのか、あるいはかけるべきなのか。生活の実態に即したクルマとは何なのか。震災に見舞われた今だからこそより真摯にそうした問題に直面できるはずだ。コンパクトカーの可能性はこれからどんどん大きくなっていくだろう。またトヨタのコンパクトカーのなかでヴィッツはこれからも中核をなしていくはずだ。そう考えると新しい価値観や方向性をこのクルマは示唆しているとはいいがたい。しかしその分、どのようにも変化していくことはできる。あるいは、変わっていくことを見越して、あえて「今は」無難にまとめているようにさえ感じられた。






 日本が大きく変わっていこうとしている。日本のクルマ作りも大きな曲がり角に来ているはずだ。これからどのように変わっていくのかを私は楽しみにしている。そして、このヴィッツはその嵐の前の静けさのように思える。





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5段階評価/★★★
☆☆
アイドリングストップ採用グレードが少ない(-1)
スタイルに独自性が薄い(-1)
後席中央ヘッドレスト、3点式シートベルトを備えないこと(-1)
アシや骨格の骨太さと手練の味付け(+1)



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試乗データ

試乗日:2011年4月13日
試乗車:ヴィッツ1.3 F SMART STOP パッケージ(車両本体価格:1,350,000円・OP含まず)
型式:DBA-NSP130
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3885×1695×1500mm
ホイールベース:2510mm
最小回転半径:4.5m
車両重量:1000kg
トランスミッション:Super CVT-i
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:ブラックマイカ #209
内装色:ライトグレー
装着されていたオプション:
 14インチアルミホイール
 モデリスタVer.II
  フロントアンダーリップスポイラー
  ヘッドランプカバー
  サイドガーニッシュ
  マフラーカッター



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メーカーサイト
http://toyota.jp/vitz/



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐


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