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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#132 代償は大きい


ホンダ オデッセイ アブソルートEX 試乗インプレッション (2013.11)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 大きく変化した五代目オデッセイ。もっとも大きな変化としてヒンジドアからスライドドアへの変更は賛否分かれているところだろう。オデッセイとしてほしかったものを手に入れた。しかしその代わり失ったものも当然あるわけで、それはあまりに大きな決断だったように思う。


エクステリア



 低床、低重心にして低全高であった前二世代モデルはどちらかというとステーションワゴン的な趣きすらあった。それはミニバンというよりパーソナルカーのそれであって、そのパーソナル感こそがオデッセイのオデッセイたる所以であったように思う。今回はエリシオンとの間と採った格好か。




 スライドドアの利便性は理解できるが、オデッセイのパーソナルなイメージは失った。ちなみにスライドドアは良いことばかりではない。開閉システムが複雑になる為その仕組みの為の重量増と、アームを車体内に走らせるため室内幅を犠牲にする。




 リアデザインは先代の印象を残す。それにしても、せっかくスライドドアを採用するなら、トヨタのようにレールの処理をもっとスマートに出来なかったものだろうか。


視界・扱いやすさ



 全高以外の寸法は殆ど変わっていない。むしろ四角張った格好になったことで四隅は捉えやすくなったといえる。パドルシフトあり。このクルマもタコメーターはデジタル。チルト&テレスコピックのハンドル。シートは電動調整の8ウェイで前後の高さ、リクライニングが調整可能。このグレードのパワーウインドウは4席分ワンタッチ。




 クリック感のないスマホ的なエアコン操作パネル。いちいち見ないと操作できないのは自動車の操作系統として落第。ちなみにナビもスマホ式タッチパネル。拡大やスクロールは簡単になった。ナビの操作はまだしも止まった時に、という但し書きはつくだろうが、エアコンは走行中にも操作する。これではダメ。




 左前方視界。せっかく細身にしたAピラーも白い色のためにフロントガラスに写りこむ。




 左後方視界。各ピラーは太いが運転席からの目視界は考慮されているように感じる。


インテリア・ラゲッジ



 試乗グレードはアブソルートEXで内装色は黒系。ノーマル系はベージュを採用しており、木目とのコンビネーションも上品。ホンダはこうしたところの雰囲気作りがいい。




 前席のサイズはゆとりがあり、豊かな着座感がある。このクルマでコーナリングを攻めるひともいないだろうからサイドサポートもこの程度で充分。束縛されずユッタリとした気分にさせてくれる。

1列目頭上空間/こぶし2つ




 スライドドアに次いで得たもの、其の弐。二列目のセパレートシートは中折れ機構などを備えた贅沢なソファータイプとなった。ベンチ式の3名がけ仕様もあるが、やはりこちらのほうが贅沢な印象がある。しかし細かな細工をしているせいかシートクッションにはあまり手が回っていないような気がする。クッションは薄めでかけ心地は見た目ほどではない。

・二列目頭上空間/こぶし2つ
・二列目膝前空間/スライド位置を標準的な位置にして、こぶし2つ以上




 二列目は中央に寄せて後方にスライドさせ、空間を稼ぐことが出来る。走行中はリアサスペンションからのゴトゴト感があり、必ずしもフラットというわけではない。ホイールベースのほぼ中央に座るから上下動は少ないが、全体としてしっとり感に欠ける。欠けると感じるということはそれだけの期待値があるからこそ。せっかくこうしたシートや空間を手に入れたのだから・・・という期待。




 三列目はやはり実質二名用。二名用としてはゆとりがあるかな、という程度。

・三列目頭上空間/手のひら一枚
・三列目膝前空間/二列目を標準的な位置にして、こぶし1つ半




 三列目シートをこうして床に仕舞い込みフラットな空間を得られるのが、歴代オデッセイの美点。このようにして使われることの方が多いのではないだろうか。


エンジン・トランスミッション

 1830kgの重量に対して、エンジンのキャパシティは必要充分のレベル。正直に言うとV6が欲しい。エンジンルームにもV6を納められそうな余裕がある。行く行くはアコードのようなハイブリッドを搭載してくるのだろうが、その場合、バッテリーはどうするのだろう。




 トランスミッションはCVT。やっぱりのCVT。むろん現代のCVTだからダイレクト感もあるしネガティブは少ないが、運転した印象としてどうにもファジーな感じがして個人的に好きになれない。路面とダイレクトに繋がっている歯車式のほうが信用できるのだ。それにこの重量を引っ張るわけで、故障に対する信頼性にも個人的に不安が残る。ホンダはフィットハイブリッドでせっかくDCTを作ったのだから、もっと広めるべきだと思う。


足廻り



 重い車重、ゆとりあるストローク。以前のように上下寸法の制約から解放されているからこの点はかなり改善されている。ただ、アブソルートはローハイトの18インチタイアを履くからその硬さは伝わってくる。やはりこのクルマはもっとおとなしいタイアでゆったり感を味わうべきだ。ハンドルはダルではないがシャープでもない。”ミニバン”として標準的。そこいらへん旧型はスポーティですらあったのに。


結論

 新型オデッセイの論点は、クルマとしてハードウェアの出来云々以前に、オデッセイとしてどうあるべきか、というところにあるように思う。確かに室内は広がったしライバルが持つ美点をことごとく備える結果とはなったが、そのかわりにオデッセイがもっていた、パーソナル感は放棄することになった。多人数乗用車でありながら、ヒンジドアにこだわり、所帯じみたところを嫌ったオデッセイは過去のものとなってしまった。オデッセイには独自の土俵、マーケットがあったのに、そいつをあっさり捨て去り、ライバルのひしめく土俵に乗り換えた。その結果、オデッセイは単なる凡ミニバンになりおおせてしまった。本田宗一郎さんのいちばん嫌がる商売の仕方だと思う。






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10項目採点評価

基本ポリシー >>> 5
スタイル/インテリア >>> 5
エンジン/トランスミッション >>> 7
NVH >>> 7
ドライバビリティ >>> 7
スペース >>> 8
気配り度 >>> 6
先見性 >>> 5
完成度 >>> 7
バリューフォーマネー >>> 7



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試乗データ
試乗日:2013年11月8日
試乗車:オデッセイ アブソルートEX(車両本体価格:3,585,000円)
型式:DBA-RC1
エンジン:K24W(直列4気筒DOHC自然吸気)
トランスミッション:CVT(マニュアルモード付)
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4830×1820×1685mm
ホイールベース:2900mm
最小回転半径:5.4m
車両重量:1830kg
タイア:228/45R18 91W
JC08モード:13.6km/L
ボディタイプ:5ドアミニバン
ボディ色:プレミアムヴィーナスブラック・パール
内装色:ブラック/ファブリック+プライムスムース
装着されていたオプション:
         オプションボディカラー(42,000円)



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メーカーサイト

http://www.honda.co.jp/ODYSSEY/




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐



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