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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#196 日産リーフ ~ 試乗 〈2017.11〉



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください

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 リーフというクルマ 

 個人的な思いを言うと、初代リーフというクルマ、カルロス・ゴーン氏による「既成事実のクルマ」という印象が拭えない。電気による動力100%というのは画期的だったが、給電施設の普及はこのクルマの登場後、十全に行き渡っているとは思えないし、その上航続距離の問題もいまだ小さくない。動力性能においてシームレスで思ったより速いという良さはあっても、クルマ全体としての魅力をうまく創出できていないという点で、「出てきただけ感」が非常に、個人的には強くある。リーフという電気自動車を「出す」と宣言して実際に出した。それによって当時の日産に活気をもたらそうとしたのだろうが、それは身内の問題でしかない。身内の問題で「電気である」という以外に魅力のないクルマをゴリ押しされても・・・7年を経て二代目となった。


 外 装 



 顔の整形は今回のモデルチェンジの大事な部分。どうにもボンヤリした感じの締まりのない表情だった初代に比べ、うんと二枚目になった、というかそれを狙っている感ありあり。




 しかしあいかわらずポヨ~ンとしたシルエットはそのまま、というか不変。フルモデルチェンジというより、超ビッグなマイナーという感じだろうか。7年でオールニューにできるほど利益は生んでいない車種であろうし、であればこそ、の、内情は想像に難くない。




 ジュークっぽいテールレンズを移植・・・移植って、まあ前のがそんなにヒドいわけじゃなかったんだけど、でも今回のリーフではこういう「路線」で行きたいという日産のキモチが伝わってくる。つまり、より普及的存在になりたいと。フツウにわかりやすいクルマになりたい、と。航続距離や諸々の不安や不便さをデザイン面からもバックアップして・・・ん~でもそんな内情が丸見えなデザインてのもなあ。。


 運 転 席 



 やっぱりメーターはアナログがいいよね、、なんて誰が言ったのか。私は個人的にデジタルの方がスペースも取らないし、瞬読性も高く、ましてこのクルマには向いていると思う。これも普及化推進の一環か。駐車ブレーキはコンソール設置の電気式でグレードによりペダル式二度踏み解除方式のものもある。ステアリングスイッチは「見ながら操作」が前提の設計。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。




 Aピラー内張りは黒くしてあり、角度もいいから日光を受けてガラスに反射しにくい。三角小窓はもうすこし視界確保を考慮してもいいのに。ドアミラーの形は撫で肩に過ぎずちゃんと見えて欲しい領域を過不足なく映す。




 ペダル廻りはこんな具合。




 目視後方視界はご覧のとおり。初代と骨格が同じ(?)ならこのへんも変わらずということか。


 内 装 



 メーター周辺のデザインが大きく変わり、加飾や造形は新しくなっているが基本的に中身は同じ、といった感じ。エアコンのスイッチデザイン、配列なども共通。それが悪いとは言わないが。




 前席シートはサイズも余裕がありおおらかに身体を受け止めてくれるタイプ。悪くはないが、とくにこのクルマらしい特徴も見いだせない。初代初期型のダイアル式からラチェット式に変更になっている(初代途中から)シートリフター。

 前席頭上空間:こぶし2つ




 シートサイズや各部角度などもとくに不満なし。着座位置は高めで前方の見通しが良い。

 後席頭上空間:手のひら2枚
 後席膝前空間:こぶし2つ(前席筆者着座位置設定時)




 初代初期型は後席の背中にバッテリーが鎮座していたが、それも次第次第に搭載位置、サイズが見直され、客室や荷室を侵食することはほぼなくなった。普及化された部分。


 走 り 



 パワー感や静粛性、全体を通したパワーユニットから得るフィーリングはほぼ不変。航続距離も増えているというが、短時間の試乗では確認できない。


 走行を開始してまず第一に感じられるのは「軽やかさ」。数値で見るとこの最上級グレードと初代初期型の車両重量は同じ1520Kgとなっているが、とくにハンドル操作に対する応答の素直さやフロントヘビー感の是正など、操縦フィーリングにおける改善幅が大きいと感じられた。プロパイロットを搭載しているにもかかわらず、積極的にハンドルを握る楽しみをも向上させている。さすが日産。


 プロパイロットは試さなかった。筆者があれこれ言ってもしかたあるまい。ただ、こうしたものに「補われなければならない」ような、疲労、病気を含めた「身体状態」であるなら、そもそも運転席に座ってドライブに臨むべきではない。


 エコペダル、じゃなかった、e-Pedalはいちおう試したが、キモチ悪くてすぐにやめた。教習所で教える様式以外の運転方法に無理やり変更する意味がわからない。


 このあたりの装備は「アイキャッチ」以上のものではないと思う。




 給電口は二種類備えている。




 試乗グレードは17インチタイアを履く。持て余すことなく、引き締まった印象を獲得した上でその上で軽快さも演出している。



 結 論 

 基本的な部分を大きく変えずにフロント、リアのデザインを魔改造、じゃなくて、リニューアル。パワーユニットは航続距離改善面での改良を適切に受け、プロパイロットやe-Pedalといった最新のアイキャッチも備え、”商品力”をアップさせた。そう、まさしくアップデートといった感じの新型リーフ。現行セレナの時にも感じた、カネをかけずに効率的に新鮮味のある新型車を仕立て上げるという、このところの日産お得意の手法だな、と。


 原発再稼働だなんだとやっていて火力依存度もあいかわらずというこの国の給電事情にあって、大量生産される電気自動車がとても環境問題に対する適切な回答になっているとは思えない。


 たしかに、実現し、普及、浸透させたことは功績かも知れない。だがそれは歴史に名を残したいだけの功名心に過ぎないのではないのか。本当の意味で自動車ユーザーを含めた国民にとって有益な商品足り得るのかどうかの検討が、あまりなされていないような虚しさ、独り善がりなところがこのクルマと、カルロス・ゴーン氏の経営、というより、クルマ作りからは感じられる。ま、それが彼のキャラクターなのだというなら否定はしないが、自動車をザンネンな商品になり下げていることだけは間違いないと思う。







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 筆者が感じたリーフの「良かった点」
・ダイレクト感のある軽快な走り
・外装色がたくさんある
・二枚目な顔つきになったこと

 筆者が思うリーフの「良くして欲しい点」
・アイキャッチ装備を用いなければ新味を出せないところ
・航続距離と給電施設への不安
・原発再稼働には反対ですし、火力依存もなんとかしないと(ちょっと逸れてるけど)



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 参考データ

試乗日:2017年11月29日
試乗車:日産リーフG
車両本体価格:3,990,600円
型式:ニッサンZAA-ZE1
エンジン:EM57
駆動方式:FF
トランスミッション:-
全長×全幅×全高:4480×1790×1540mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1520kg
最小回転半径:5.4m
装着タイア:215/50R17 91V(ダンロップ・エナセーブEC300)
JC08モード交流電力消費率:120wh / km
JC08モード一充電走行距離:400km
ボディ色:オーロラフレアブルーパール(P)<#RAY・特別塗装色>
内装色:ブラック/織物(バイオPET)
装着オプション:特別塗装色(43,200円)
        フロアマット(29,800円)



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 メーカー公式サイト







2017.12.20 記
前田恵祐

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