上述のとおり、バッテリーや燃料タンクをうまく後席座面下に収めているため、ほぼ影響を受けていないラゲッジスペース。このうえアンダーフロアにもスペースがある。じつに使い勝手の良さそうなラゲッジスペースだ。
■ エンジン・トランスミッション
1NZ系1.5リッターエンジンと組み合わせたハイブリッドは、もはや他社の新しいハイブリッドの中では古参組。しかしよく手入れがされ乗る度によくなっていく。ただエンジンが加担したときとEV走行時との切れ目や、エンジンそのもののマナーはやはり他社より一歩以上後退してしまったというのが偽らざる印象。おそらくや遠からずトヨタもこのシステムを大幅に刷新する時期がやってくるのではないかと想像する。
最上段が今回走行時スタート後の平均燃費。試乗終了時に撮ったものだがこの時点で29.0Km/L。それ以前の走行中には32Km/L台も記録していたから、実燃費はかなり伸びる方だと思っていいだろう。発進時はできるだけエンジンを始動させないように、赤信号を早めに察知してスロットルオフを早めに行うこと、これ重要。
■ 足廻り
ヴィッツ系のBプラットフォームが用いられている現行カローラ系。ヴィッツのときはあまり感心しなかったが、なぜかカローラはまるで別のクルマのような印象。まず、骨格を含め床板ががっちりと強固で、それに取り付けられるサスペンションパーツの取り付け剛性やパーツそのものの剛性も高く、じつにしっかり感がある。そのうえブッシュもソリッドで無駄な動きがなく、バネダンパー系もいつものトヨタ車のような渋さがなく素直でキレイにストロークする。ましてやハンドルの剛性も高く十分にダイレクトで情報伝達も豊かとなれば、そう、まるで良くできたヨーロッパ車。信頼感、フラット感、しなやかで軽快な身のこなし、全てを十全に獲得している。
この設えはじつに素晴らしい。情熱的に楽しめるドライブフィールでこそないが、運転していて眠くならない、イヤにならない、退屈しない、過不足ない緊張感を保ちながら正しく運転できる。トヨタ車の中でも屈指の出来栄え。目隠ししてプジョーやワーゲンと乗り比べてみて欲しい・・・目隠し運転はダメだけど。
■ 結論
前期型に対するマイナー後のカローラ。元来の出来の良さは歪められていないことが確認できた。むしろ出来の良さをそのままに、約三年分の時間を静粛性向上に充てたり最新の予防安全技術の搭載に充てたりと、適切に手入れをされ、磨きをかけられている、トヨタとしては手厚く厚遇されているクルマだ。トヨタ車の中ではマイナーチェンジをするとガックリさせられる例も少なくない。その点このクルマはその心配はないといっていいだろう。
自動車にブラインドテイスティングが許されるのなら、先も記したようにヨーロッパのライバルと並べて比べても遜色のない出来のクルマだ。運転視界からはじまり、シートの出来、ピラーの角度、広さやスペース効率への考え方、そして走り・・・このクルマはもしかすると本当にヨーロッパ車になりたかったのかもしれない。決して大げさではなく、カローラの皮を被ったヨーロッパ車と言ってしまいたいくらいだ。
このクルマをカローラとして購入するクルマにさして興味のない人。その人たちはこのクルマの走りをどう思っているのだろう。あるいは、このクルマに乗ってこのクルマの良さに気が付けないクルマ好きは単なるブランド馬鹿だ。その意味でカローラ(フィールダー)はトヨタの隠し玉であり、ちょっとしたトラップのようなものかも知れない。どうか先入観を捨ててこのクルマに乗ってみてほしい。大バーゲンであることに素直に喜べるはず。
トヨタが沈着冷静に実用車を、かつ真面目に作ればこのような出来のものができるという好例。まったく気の抜けたコーラのようだったオーリス120Tにはゲンナリさせられたが、本当のトヨタの実力やノウハウを知るにはこのクルマが好適と申し上げておく。
--------------------------------------------------
■ 10項目採点評価
ポリシー >>> 9
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 9
走りの調律度 >>> 10
運転環境と室内空間 >>> 10
ヒトへの優しさ度 >>> 10
卓見度 >>> 8
完成度 >>> 10
バリューフォーマネー >>> 9
--------------------------------------------------
■ 試乗データ
試乗日:2015年6月11日
試乗車:トヨタ・カローラフィールダー ハイブリッド
車輌本体価格:2,195,345円(OP含まず)
型式:DAA-NKE165G
エンジン:1496cc直列4気筒DOHC[1NZ-FXE]+交流同期電動機[1LM]
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4400×1695×1475mm
ホイールベース:2600mm
車輌重量:1180kg
最小回転半径:4.9m
タイア:前後175/65R15(BSエコピア)
JC08モード燃費:33.8km/L
燃料タンク容量:36L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:4ドア+テールゲート/ステーションワゴン
ボディ色:シルバーメタリック/1F7
内装色/素材:ブラック/トリコット
装着されていたオプション:
スペアタイア(10,800円)
トヨタセーフティセンスC(54,000円)
T-Connectナビ[NSZN-W64T](182,304円)
バックガイドモニター(23,544円)
フロアマット・デラックスタイプ(21,600円)
ETC車載器(ビルトイン)ボイスナビ連動(27,162円)
--------------------------------------------------
■ メーカーサイト
http://toyota.jp/corollafielder/
--------------------------------------------------
ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに「正解」を示しているつもりは全くありません。
製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。
前田恵祐
.